洋楽:代表曲って変わるの?~初心忘るべからず

アーティストと、「代表曲」の関係について、理想的な関係は、「代表曲」がアーティストの成長とともに変化していくことだと思います。

まず、アーティストの存在を世に知らしめた曲が、代表曲となり、年月を経て聴衆に支持され続けるために発表した曲が、また代表曲として塗り替えられていくというのが理想だと思います。

初心忘るべからず

「初心忘るべからず」という言葉は、誰しもが聞いた言葉だと思います。

ただ、誰の言葉であるかは、多くの人が知らないことだと思います。

この言葉は、室町時代に能を大成させた「世阿弥」の執筆「花鏡」の中の言葉です。

「世阿弥」は、単に、「能」という芸能にとどまらず、芸能、芸術全般に通じる理論を展開しました。

その代表的な著書にの「風姿花伝(花伝書)」は、学問的な芸術論書ではなく、どうしたら芸能役者として人気を保ち続けることができるか指南したものでもあります。

成熟した花を咲かせた “Swing Out Sister”

「世阿弥」は、役者が人気を保ち続けるために必要なものは、「花」だと言います。

「花」とは、「美しいもの」、「珍しいもの」だと言います。

よく、「あの役者は花がある」と言いますよね。

そういう意味では、”Swing Out Sister”が、”Breakout”(アルバム”I’ts Better to Travel”に収録)で、デビューしたころは、大変「花」がありました。

>”Swing Out Sister”に関する記事はこちらから

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そこで、「初心忘るべからず」という言葉を洋楽アーティストにあてはめてみたいと思います。

“Swing Out Sister”の場合、「初心」とは、”Breakout”を発表した頃の初々しい感性をいつまでも持ち続けなさいということでしょうか。

そんなことは、「世阿弥」も言っていません。

若い頃の「花」とは、その若さからくる生来の美しさであるが、アーティストに例えると、その斬新さと時流にのって一時的に人気を集めたものであり、本来の実力に裏打ちされたものでは必ずしもないということです。

年齢を重ねてくると、若いだけで「花」があった頃と同じことをやっても聴衆の支持を得ることが難しくなります。

そこで、「世阿弥」の「時々の初心を忘るべからず」、「老後の初心を忘るべからず」という言葉が意味を持ってきます。

アーティストも、彼らの音楽活動を重ね、その時々の年代にあった「初めての」境地をおぼえ、その芸術性を高めていく必要があるというこです。

それを上手に成し遂げたのが、”Swing Out Sister”です。

デビュー後、何年も”Breakout”と同じような曲を作り続けていたら、これほど長きに渡って音楽ファンに支持されることはなかったと思います。

今彼らを、”Breakout”の”Swing Out Sister”と呼ぶ人は少ないでしょう。

今では、彼らの代表曲は、”La La (Means I Love You)”(アルバム”The Living Return”に収録)であり、”Now You’re Not Here”(邦題:あなたにいてほしい)(アルバム”Shapes & Patterns”に収録)でしょう。

>アルバム”The Living Return”に関する記事はこちらから

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>アルバム”Shapes & Patterns”に関する記事はこちらから

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成功体験をあっさり捨てた “New Order”

同様に、”New Order”の代名詞とまでも言われる”Blue Monday”にいつまでもしがみついていなかったのが、”New Order”です。

“Blue Monday”の斬新さがあまりにも強烈であったため、”New Order”=”Blue Monday”の構図が出来上がってしまいました。

当時の”Blue Monday”には、「珍しいもの」という「花」がありました。

>”New Order”に関する記事はこちらから

「世阿弥」は、「花」の中に、「秘伝」というものを挙げていました。

その役者や、アーティストにしかできない「珍しいもの」という存在です。

秘伝というからには、そう度々披露していては、秘伝でなくなってしまうし、完全に秘密にしていては、聴衆の耳にも届かないので意味がなくなるというものです。

斬新なものも、いつかは斬新でなくなるのです。

そして、”New Order”は、”Blue Monday”の延長線上にあるような”Fine Time”という曲を発表し、彼らが志向していたエレクトリック・ポップという一ジャンルで、アルバム”Technique”でとうとう、最高点に到達することになるのです。

>アルバム”Technique”に関する記事はこちらから

アルバム”Technique”に行き着くまでも、”New Order”は、代表曲を次々と塗り替えるような偉業を成し遂げてきました。

ざっと眺めてみても、アルバム”Low Life”に収録されている”Perfect Kiss”、”Sub-Culture”、アルバム”Brotherhood”の”Bizarre Love Triangle”などがそれにあたります。

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>アルバム”Brotherhood”に関する記事はこちらから

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そして、驚くべきことに、最高点に到達したエレクトリック・ポップ路線をあっさりと捨てて、ギター・サウンドを全面押し出した”Regret”
(アルバム”Republic”に収録)を発表します。

>アルバム”Republic”に関する記事はこちらから

まさに、”New Order”の新境地です。

円熟期を迎えた”New Order”の「初心」です。

長い音楽活動期間の中で、その時期にあった「初心」を見出したことが、長きに渡って洋楽界の一線で活躍してきた理由と言えるでしょう。

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