音楽を科学する:認知症予防にも・・・

日記

今日は、「音楽」と「脳」の関係について興味深い話を聞きましたので、みなさんにもご紹介したいと思います。

講演のテーマは、「音楽ってなんだろう?~脳を活性化して認知症を予防しよう~」です。

講師の先生は、「東京女子医科大学の岩田 誠先生」です。

先生のお話を聞いて、音楽に関して「ああ、なるほどな」と思えることがたくさんありました。

音楽はいつから始まったのか?

みなさんの中には、音楽の歴史というと、「音楽の父」といわれた「バッハ」を思い浮かべるひとが多いと思います。

しかし、音楽の歴史を紐解いてみるとバッハ以前にも、音楽の潮流はあり、キリスト教社会で歌われた「グレゴリオ聖歌」などがあげれらるのではないでしょうか。

「グレゴリオ聖歌」といっても、わずか1400年前の話です。

最近の研究では、ラスコー洞窟やアルタミラ洞窟にて壁画を描いた20,000年前の後期旧石器時代のクロマニョン人より、さかのぼること、さらに10,000年前にネアンダール人の時代には、既に音楽があったというものがあります。

その根拠として、前述したラスコー洞窟などでは、洞窟画が描かれた場所は、音響効果の良い場所であったらしいということです。

特定の周波数帯域(バリトンの声ぐらいのもの)に関して特に音響効果が良かった場所らしいです。

その当時の音楽とはどのようなものだったのでしょうか?

おそらく、歌や踊りと一体化した「祈り」などの宗教的な要素が強いものだったと想像されます。

グレゴリオ聖歌にしても、宗教的な意味合いが強いものだったと考えると、音楽も絵画もその始まりは宗教との強い結びつきを感じます。

やがて、宗教的な要素は薄れ、印象派がキャンパスを屋外に持ち出し、人々の日々の暮らしに焦点を当てたように、音楽も人々の気持ちにスポットライトをあてはじめたのでしょう。

音楽は脳のどの部分で感じる?

人間の脳を大きく分けると、外側の「知」をつかさどる部分と、内側の「情」をつかさどる部分に分かれるようです。

そして、脳の内側の部分に、「感情の回路」と「記憶の回路」が存在し、それぞれの回路には共有する部分があるようです。

よく、昔聴いていた曲を何かの機会に、聴くことがあるとその当時の思い出が鮮明によみがえてくることがあります。

きっと「感情の回路」と「記憶の回路」が密接に結びついているからかも知れません。

また、さまざまな芸術の分野で、音楽だけが、「知」(言語野)の力をかりずに、情動系や運動系に直接はたらきかけてくれるということです。

そのため、歌詞がわからなくても、なんとなく楽しそうな音楽なのか、物悲しい音楽なのか認識することができるのでしょう。

また、知らず知らず体が勝手に踊りだすなんてこともあるのでしょう。

音楽でなぜ認知症を予防できるのか

認知症の原因としてもっとも多いのは、「アルツハイマー病」です。

アルツハイマー病は、脳のゴミといわれる「アミノイドβ(ベータ)」が蓄積されることが原因といわれています。

残念ながら、このアミノイドβ(ベータ)の蓄積の進行は止めることができず、その進行が早いか遅いかの違いで誰しもその進行を妨げることはできないといわれています。

不思議なことに、自分の家族の顔も識別できないほどの重度の認知症患者でも、昔から接してきた音楽は、記憶の中に残っているといわれています。

冒頭にあげた「岩田先生」が、認知症の患者さんが、教会に行ったときに、流れていた賛美歌を最初から最後まで歌い通した例を紹介してくれました。

おそらく、私も認知症になったら、徘徊しながら、ビートルズの曲を口ずさんでいることでしょう。

音楽は、記憶と結びついているため、特定の時代に流行った歌は、その時代の思い出を呼び戻すことができる(音楽による回想)ようです。

音楽によって、「自己の存在」や「見当識(現在の年月や時刻、自分がどこに居るかなど基本的な状況把握のこと)」を高めることができるといわれています。

また、音楽活動は、情緒を安定させ、集団での音楽活動は社会的な協調性を促進することで、脳を活性化させるともいわれています。