汚れなき愛は、逆説的?
Soft Cell(ソフト・セル)と言えば、”Tainted Love”:「汚れなき愛」というほど、この曲で一躍有名になりました。
もちろん、おすすめのアルバムは、この”Tainted Love”が収録されている彼らのデビュー・アルバム”Non-Stop Erotic Cabaret”です。
“Tainted Love”は、「汚れなき愛」という邦題がつけられていますが、原題を直訳すると「汚れた愛」で、邦題は、正反対の意味となります。
“Soft Cell”の曲調や歌詞からすると、むしろ「汚れた愛」の方がしっくりくるような気がしますが、逆説的な意味で、「汚れなき愛」でもよしとしましょう。
この”Tainted Love”をはじめとし、”Sex Dwarf”:「セックス小人の誘惑」、”Bedsitter”:「ベッドの上が僕の国」など、倒錯した愛の歌が並ぶ”Soft Cell”ですが、同時代のエレクトリック・ポップのバンドの”Depeche Mode”や”Human League”とはだいぶ趣が違います。
ソング・ライターでありボーカルの”Marc Almond”:「マーク・アーモンド」は、自らゲイであることを公言し、彼が描く退廃的・文学的な歌詞に、彼の繊細さを感じます。
デビュー・アルバム”Non-Stop Erotic Cabaret”
“Tainted Love”:「汚れなき愛」に代表されるように、各曲に、邦題がつけられています。
それだけ、”Marc Almond”が描く独自の世界に日本の音楽界も注目していることの表れでしょう。
彼らの代表曲である”Tainted Love”は、1964年に”Gloria Jones”:「グロリア・ジョーンズ」のカバーです。
“Soft Cell”によって、”Tainted Love”は、エレクトリック・ポップと化し、見事な変身を遂げています。
さらに、この曲は、ボサノバ歌手の”Karen Souza”:(カレン・ソウサ)もカバーしていて、気だるい”Tainted Love”になっています。
原曲が、黒人女性シンガーによる典型的なモータウン・サウンドだけに、これほどまでに曲のイメージが変化するのは、驚きです。
これぞ、カバーの醍醐味と言えるでしょう。
アルバム・タイトルの”Non-Stop Erotic Cabaret”の「キャバレー」という言葉も今となっては死語のような古めかしい雰囲気を感じますが、”Marc Almond”の歌う姿も、どことなく場末のキャバレーの女性シンガーを連想させます。
陽の光を浴びることのない「アンダー・グラウンド」に棲む住人の生きざまを感じさせます。
>アルバム”Non-Stop Erotic Cabaret”に関する記事はこちらから
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セカンド・アルバム”Art of Falling Apart”
前作の”Non-Stop Erotic Cabaret”より、楽曲もぐっと洗練されて、”Marc Almond”の歌声やサウンドもだいぶ引き締まった感じがします。
力強い音の原因は、タイトなドラミングとホーン・セッションによるものでしょう。
オープニング・ナンバー”Forever The Same”に、その音の変化が如実に表れています。
アルバム・タイトルは、”Art of Falling Apart”:邦題は、「滅びの美学」です。
「滅び」はともかく、「美学」という表現は、このアルバム(前作の”Non-Stop Erotic Cabaret”も含めて)の
コンセプトを上手く表現していると思います。
>アルバム”Art of Falling Apart”に関する記事はこちらから
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解散前の最後のアルバム”This Last Night in Sodom”
より激しさを増したのが、最終作となったアルバム”This Last Night in Sodom”:邦題「ソドムの夜」です。
“The best way to kill”、”Meet Murder My Angel”など物騒なタイトルの曲が並びます。
退廃的な雰囲気の中にも、同時にメランコリックな部分も持ち合わせていたデビュー当時の”Soft Cell”でしたが、最後のアルバムで、破壊的なサウンドで幕を閉じます。
「汚れなき愛」で、一躍スターダムにのし上がった彼らが、綺麗ごとだけでは語り尽くせぬ多様な愛の形を見せてくれました。
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