ジャケ買いする人
“Atom Heart Mother”、邦題は、「原子心母」です。
原題のタイトルの単語ひとつひとつをただ和訳しただけですが、なぜかアルバムのコンセプトとよくマッチしてしっくりくるタイトルです。
アルバム・ジャケットは、アルバム自体がすごく革新的なのに対して、すごく牧歌的で、ジャケット表面には、タイトル名もバンド名も表示されていません。
(「ジャケ買い」する人は、皆無だと思います。もし、ジャケ買いする人がいたら、どんなことを期待して買っているのか興味をそそられます。)
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交響曲「原子心母」
それでは、「Atom Heart Mother:原子心母」の中味を見ていきましょう。
表題曲でもある「Atom Heart Mother」は、組曲です。
当時としては(十分今でも)1曲にLPレコードの片面まるまるを費やすのは随分と画期的なことであったに違いありません。
カテゴリーとしては、「プログレッシブ・ロック」なのですが、オープニングのブラスセッションは、もはやクラッシク音楽です。
途中のコーラス部分の荘厳さは、「サイボーグ009」の最終回を思わせます。
やがて、再び地球に平和が訪れる頃には、壮大なコーラスは、ブルージーなギターとキーボードのサウンドに変わります。
そして、最初の「主題」が展開されていきます。
これは、もう、クラッシク音楽のロンド形式ではないでしょうか。
“Pink Floyd”は、「革新」なのか「懐古」なのか、もしくは「温故知新」派か。
エンディングでは、管弦楽の憂いを帯びた音色がやがてギターソロに変わり、ブラスセッションで幕を閉じる。
やはり、「交響曲」そのものです。
続く、”If”、アコースティックギターに乗って囁くように歌いだすこの曲は、”Pink floyd”の精神世界を描き出しているような気がします。
悲しげなエレキギターの音色が、より哀愁を誘います。
“Summer ’68” は、私の大好きな曲です。
静かなピアノの弾き語り調で始まるのですが、”How Do You Feel”の部分でゾクゾクします。
(実はそのちょっと前から、ソワソワしています。「来るぞ来るぞ」って感じです)
絶頂期を迎えた後、恍惚感に浸っているとブラスの音とピアノの掛け合いが遠くで聴こえてきます(別に遠くで聴こえてくるわけではなく、そんな気がするだけです。)。
この曲こそ、”Pink Floyd”の音だなって強く感じます。
「時は金なり」「月の裏側」
ところで、”Pink Floyd”の代表的な曲が、2曲も入っている”The Dark Side of the Moon”も触れずにはいかないでしょう。
邦題は、「狂気」ですが、なぜ、「月の暗い側」が「狂気」となるのでしょうか。
実は、月は自転と公転が同期し常に地球に同じ側を向けているため、地球から見て「表と裏」の区別がります。
つまり、地球からは、月の裏側は決して見ることができない世界なのです。
そのため、月の裏側には、ピラミッドがあるとか、宇宙人の基地があるなどの説があります。
見えないからこそ、色々な想像力が働くのでしょう。
そして、”Pink Floyd”の想像力は、すごいです。
“Money”こんな音が音楽になるのかと当時度肝を抜かれた曲です。
しかし、今聴いて見ると、非常にわかりやすい「プログレシップ・ポップ・ソング」です。
斬新ではあるものの難解ではありません。
“Time”にも同じことが言えます。
決して平凡な曲では、ありませんが、人を寄せ付けないほどの気鋭さはないです。
時代がやっと”Pink Floyd”に追いついたのでしょうか。
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