分裂の本当の理由は?
“10cc”の4作目となる”How Dare You”のリリース後に、”Lol Creme”と”Kevin Godley”が”10cc”を脱退し、残りのメンバーの”Eric Stewart”と”Graham Gouldman”の2人が”10cc”を引き継ぐ形となりました。
そして、”Lol Creme”と”Kevin Godley”は、”Godley&Creme”というプロジェクトで音楽活動を開始することになりました。
“Lol Creme”と”Kevin Godley”の脱退の理由は、表向けには、ギターアタッチメントである「ギズモ」の開発と、ギズモを駆使した音楽の追求ということでした。
しかし、それが真実でないことは明らかです。
なぜなら、彼らがギズモを使ったアルバムをリリースしたのは、脱退後の最初のアルバム”Consequences”だけで、その後のアルバムには、ギズモを使ったとはっきりわかるアルバムを発表していないからです。
後のアルバムの内容からして、ギズムの開発というのは、あくまでも表向きの理由で、真相は、進むべき音楽性の相違というのが本当の理由のように思えます。
“Godley&Creme” ディスコグラフィー
“Consequences”
“10cc”脱退後の最初のアルバムで、創作意欲を感じさせる超大作、当時はLPの3枚組で発表されました。
このアルバムは、脱退理由である「ギズモの開発」を伺わせる、ギズモを駆使した曲が展開されます。
収録曲に”Cool, Cool, Cool”という曲がありますが、”10cc”の3作目の”The Original Soundtrack”の”Une Nuit A Paris”の続編とも言える曲です。
この曲を聴くと、”Une Nuit A Paris”や、”Head Room”(アルバム”How Dare You”に収録)は、誰が作った曲なのかは明らかです。
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“L”
もう、ギズモはどうでもよくなっています。
このアルバムは、アート・スクール出身の”Lol Creme”と”Kevin Godley”が作り出す音楽の芸術性が開花しています。
使用している楽器がどうのこうのという次元ではありません。
分裂後の片割れ”Eric Stewart”と”Graham Gouldman”の”10cc”が、発表した”Deceptive Bends”(邦題:「愛ゆえに」)と共存できる内容ではないでしょう。
ひとつのアルバムに、2組の音楽を一緒に組み入れるのには、無理があったのかもしれません。
アート・スクール時代の若き日を偲んで、曲は、”Art School Canteen”です。
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“Freeze Frame”
“10cc”の”Deceptive Bends”とは、立ち位置からしてずいぶんと遠くにある音となりました。
自身が在籍していた”How Dare You”からも遠く離れました。
“10cc”の前身でもある”Hotlegs”(『ネアンデルタール・マン』のヒット曲で知られる)とも異なる、新たな”Godley&Creme”の作風です。
木琴の連打が印象的な、”An Englishman In New York”です。
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“ISMISM”
“10cc”脱退後、問題作をリリースし続けてきましたが、あまりに前衛的で聴衆を置き去りにしておくわけにもいかないので、音楽のマーケットを少しは意識するようになりました。
“Under Your Thumb”、”Wedding Bells”のように、前作までに比べて親しみやすいメロディーもちらちら覗かせるようになりました。
“Wedding Bells”、ほんの少し、ポップな印象ももっていただけたでしょうか。
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“Birds of Prey”
ギズモ開発の件は、すっかり忘れています。
アルバム”L”のような芸術的な音づくりも影を潜め、たどり着いた音楽は、わりとシンプルな曲です。
いろいろやり尽くしたアーティストの往年の作品は、余計なものを削ぎ落とした結果なのでしょう。
曲は、”Save a Mountain For Me”です。
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プロモーションビデオのディレクターも務める
そして、”Godley&Creme”の功績と言えば、様々なアーティストのプロモーション・ビデオの制作でしょう。
有名なところでは、”The Police”の”Every Breath You Take”、”Duran Duran”の”Girls on Film”、そして、自身の”Cry”といったところでしょう。
アート・スクール出身で、映画好きの彼らにとってプロモーションビデオの制作作業は、水を得た魚でしょう。