“10cc”の10作目ののアルバムです。
最高傑作の”Bloody Tourist”以降、下降線を辿り、”AOR”路線などと揶揄され、”10cc”の時代の終焉を迎えたかのように思えましたが、商業的な成功はともかく、このアルバム”Window in the Jungle”で完全に息を吹き返したように感じます。
かつての絶頂期の”10cc”の音楽が甦ってきました。
昔からの”10cc”ファンにとって溜飲が下がる思いです。
<曲目リスト>
- 24 Hours
- Oomachasaooma (Feel The Love)
- Yes I Am
- Americana Panorama
- City Lights
- Food For Thought
- Working Girls
- Taxi Taxi
“10cc”絶頂期のサウンドが再び聴ける
1曲目の”24 Hours”: アルバム・タイトル”Window in the Jungle”の文字通り「ジャングル」を思わせる音が曲の冒頭に流れ始めると、突然車のクラクションの音でかき消されます。
実は、ジャングルは、ジャングルでも都会の喧騒を意味するものでした。
都会の朝は、”It’s the Starting of the Race”「レースの始まり」しかもそれは、”All of us Wanting to Win”「誰もが勝ちたがっている」レースです。
そんな、戦場のような熾烈な世界で生きていく都会の人々の姿を、”Eric Stewart”は、物語でも語るかのように歌うのでした。
そのあと、”10cc”ならではの至極のメロディーが続きます。
絶頂期のあの”Bloody Tourist”あたりの”10cc”のサウンドが戻ってきました。
もう、”AOR”などとは呼ばせない、正当派英国ロックの極上サウンドが再び聴けるとは感激です。
間奏のギターの音色を聴いてむせび泣きました。
3曲目の”Yes I Am”: アルバム”Look Hear?”の頃の”It Doesn’t Matter at All”や”I Hate To Eat Alone”を思わせる感じの曲です。
アルバム”Look Hear?”のレコード・セールスはあまり思わしくなく、音楽的な評価も今ひとつでしたが、決して悪いアルバムではないと思います。
時代の嗜好とあっていなかっただけのような気がします。
4曲目の”Americana Panorama”: “10cc”から見たアメリカの全景なのでしょう。
“Big Apple”、”Dreams Come True”などアメリカを称賛しているのか、”Fast Food”、”Junk Food”と揶揄しているのかよくわかりませんが、そういうものを全部ひっくるめて愛すべき場所なのでしょう。
曲の方は、”Super Tramp”の”Breakfast in America” とまではいかなくても、なかなかの出来です。
5曲目の”City Lights”: トリビュート”Doobie Brothers”みたいな感じの曲ですが、曲のタイトル通り、”City”:「都会的な」センスを感じさせる曲に仕上がっています。
6曲目の”Food For Thought”: “Bloody Tourist”の名曲”Dreadlock Holiday”も、レゲエのサウンドを取り入れた曲でした。
ドラミングも、”Dreadlock Holiday”のリズムを思い起こします。
いずれにしても、あの頃の音がまた聴けるのは嬉しい限りです。
7曲目の”Working Girls”: 曲中に面白い表現が出てきます。
“Cat-and-Mouse Game”がそれです。
「鼬(イタチ)ごっこ」という意味ですが、「猫」と「ネズミ」で鼬ごっことは面白い表現ですね。
他にも、アルバム”Look Hear”の収録曲のタイトルにもなった”Dressed to Kill”「男性を一瞬で悩殺してしまうようなハッとする程、セクシーな服装の女性」を形容するような表現などがでてきます。
サビの部分のメロディーなんかは、絶頂期の”10cc”のそれを思い起こします。
8曲目の”Taxi Taxi”: 1曲目の”24 Hours”と挟み込むような形で、都会の喧騒を表現しています。
それにしても、本作”Window in the Jungle”の楽曲は冴えています。
“10cc”絶頂期のメロディー・センスが完全に甦っています。
最後は、再び、ジャングルの音で締めくくられます。
「都市探検」を最後にいったん解散
本作、”Window in the Jungle”は、邦題は、「都市探検」というタイトルで日本ではリリースされました。
このアルバムを最後に、いったん”10cc”は解散します。
(再び、期間限定の再結成を果たし”Meanwhile”というアルバムを発表します。)
解散を前に、再び、全盛期の音を取り戻したのは、”10cc”ファンにとっては、残念ではありますが、喜ばしい幕切れになったのではないかと思います。
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