“Enya”の2作目のアルバムです。
(アルバム”The Celts”をデビュー・アルバムとした場合)
“Enya”は、寡作です。
これだけ精緻な音づくりをしているのですから無理からぬ話でしょう。
曲想のインスピレーションが自然と湧いてくるのをひたすら待って、ひとたび曲のイメージが浮かんでくると、それを最大限活かそうと妥協のない音づくりを重ねていくというスタイルは不動のものでしょう。
「仕事から離れて、リラックスする時間を取ることは良いことだ。というのは、ふたたび仕事に戻ってきたときに、よりよい判断ができるからだ」というレオナルド・ダ・ヴィンチの名言を地で行くような活動スタイルです。
<曲目リスト>
- Watermark
- Cursum Perficio
- On Your Shore
- Storms In Africa
- Exile
- Miss Clare Remembers
- Orinoco Flow (Sail Away)
- Evening Falls
- River
- The Longships
- Na Laetha Geal M’oige
- Storms In Africa II
早期に確立された”Enya”ワールド
1曲目の”Watermark”: 早くも”Enya”の世界に引き込まれてしまいそうになるオープニング・ナンバーです。
曲がインストルメンタル・ナンバーかどうかなど、もはや関係ないことです。
ましてや、それが、アルバムの表題曲であるかどうかも問題ではないです。
“Enya”が、”Enya”らしく唯一無二の存在であることが重要なのです。
3曲目の”On Your Shore”: 耳にと言うよりも、直接心に響くというような歌声です。
決してBGMというような音楽ではありません。
聴くという意識などしなくても体全体が、音を吸収してでしょう。
4曲目の”Storms In Africa”: 多重録音の”Enya”特有の手法で繰り出されたこの曲は、どの断片を取り出しても”Enya”固有の音が感じられます。
“Orinoco Flow (Sail Away)”と並ぶ初期”Enya”を代表する曲です。
5曲目の”Exile”: 教会音楽が基礎になっているような曲です。
間奏の笛の音は、同じアイルランド出身の”The Corrs”が多用するケルト音楽のティン・ホイッスルを思わせます。
7曲目の”Orinoco Flow (Sail Away)”: 初期の”Enya”と言えばこの曲です。
最近の”Enya”でも、良く使われている弦楽器のピチカート奏法が用いられています。
この初期の時代に、すでに”Enya”の音楽的手法が確立されいて、その完成度も現代のものと比べてもほとんど遜色がありません。
この曲調など、今までのどの音楽にも似ていない”Enya”の独自のイマジネーションを感じます。
8曲目の”Evening Falls”: 初期の時代から、現在に至るまで、その音楽的手法はほとんど変わっておらず、
その歌唱方法も何ら変わることのない”Enya”ですが、振り替えて初期のこのアルバムを聴いてみるとほんのわずかですが歌声に違いが感じられます。
相当の歳月が経っているので、まったく同じという訳にはいかないでしょう。
かと言って、この初期の時代が今と比べて瑞々しいとか、初々しいと言うつもりはまったくありません。
この時点ですでに、”Enya”の歌声は十分に成熟しています。
ただ、現在より、張りがある分、少し硬質な印象を受けます。
“Only Time”の頃の”Enya”には、もう少しまろやかな優しさがあります。
単なるヒーリング・ミュージックではありません
“Enya”の曲を聴いて癒される人はたくさんいることでしょう。
しかし、それが、”Enya”イコール「ヒーリング・ミュージック」であるという方程式は成り立たないでしょう。
“Enya”自身、聴衆を癒してあげたいというつもりで曲を作ってはいないでしょうし、こういう風に聴いてくださいというお仕着せるような気持ちもないでしょう。
しかし、”Enya”の音を聴いて至福の時を感じるのは、”Enya”のイマジネーションが聴衆とどこかで心がつながっているからに違いありません。
アイルランドのケルト文化も、日本の八百万の自然信仰とどこかでつながるものがあるのでしょう。
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