“The Cranberries”の5作目のアルバムです。
相変わらず、人間の精神世界に着目し、人間の内面を深く分析した歌詞は”The Cranberries”ならではのものです。
それに加えて、本作”Wake Up & Smell the Coffee”の曲想の特徴として、ボーカルで、曲作りも担当してる”Dolores O’riordan Burton”の私生活の変化にも大きな影響を受けているところです。
“Dolores O’riordan Burton”は、一児の母になったことにより、母性愛に満ちた曲を多く作っています。
社会で起きている事象を母親から見た視点で捉えていて、それが曲作りに活かされています。
しかも、それが、抜群の楽曲センスによって支えられていますので、多くの音楽ファンの共感を得ることになるでしょう。
<曲目リスト>
- Never Grow Old
- Analyse
- Time Is Ticking Out
- Dying Inside
- This Is The Day
- The Concept
- Wake Up And Smell The Coffee
- Pretty Eyes
- I Really Hope
- Every Morning
- Do You Know
- Carry On
- Chocolate Brown
母親の強い愛、今を生き抜く応援ソング
1曲目の”Never Grow Old”: 「大きくならないで」。
我が子の成長を願わない親はいないでしょうが、これもまた偽らざる本音でしょう。
子供のかわいい姿が、”Forever,Young”「永遠のもの」であってほしい、そして、今この時が、”My Perfect Day”「一番幸せの時」という想いは十分すぎるくらいわかります。
ただ、その想いが叶わないとわかっているからこそ、悲痛でもあり、今を大切に生きることが大事であるということでしょう。
そう言えば、前作の”Bury The Hatchet”の”Animal Instinct”も母性愛がテーマの一つになっています。
PVで、養育権を盾に、母親と子供たちが引き裂かれる様子が描かれていましたが、社会的な正義よりも、人間の動物的本能”Animal Instinct”の方により多くの人が共感を覚えるのが人間の性というものでしょう。
>アルバム”Bury The Hatchet”に関する記事はこちらから
2曲目の”Analyse”: このアルバムの最大のハイライトであり、”The Cranberries”の屈指の名曲です。
楽曲の良さだけでも、十分魅力的な曲ですが、シンプルな歌詞に込められた意味は非常に深いです。
曲のタイトルが、”Analyse”なのに、曲中で、”Don’t Analyse”と盛んに訴えているのは興味深いです。
人生をあんまり分析するな(ものごとをあまり深く考えるな)と”Dolores O’riordan Burton”は、言っています。
人生のこの瞬間を生きていこう、考えすぎることは、あれこれ心配の種を増やすだけ、ここにあるものだけで生きていくことが素晴らしいことだということを”Dolores O’riordan Burton”は言っているのです。
3曲目の”Time Is Ticking Out”: 母親になって、心配ごとのひとつは、子供たちによりよい環境を残すことができるかということです。
そういう意味では、原発事故(この曲では「チェルブイリ」が取り上げられていますが、日本でも福島の原子力発電所の事故は、今でも未解決の問題です)や大気汚染(オゾン層について触れられています)が歌詞にも出てきて、母親としての憂いと何とかしなければという警告の想いを感じさせます。
“Time Is Ticking Out”「時間は刻々と刻まれています。」あまり猶予がないということです。
5曲目の”This Is The Day”: 今日がその日。
一体、何の日なのでしょうか。
“Don’t be Insecure, I ‘ll be at Your Door「心配しないで、すぐに駆けつけるから」。
“I Will be There for You”「いつでも、あなたのためにそこにいる」。
と愛する人を守ってあげるという強い意思を感じます。
“But the Wind Might Change”「風向きが変わるかも知れない。その日がくるかも知れない」。
一方で、永遠に守ってあげることなどできないこともわかっています。
激しい曲調に、愛する者を守りぬくという強い意思と、それを永遠に貫くことはできないという苦悩を感じ取ることができます。
7曲目の”Wake Up And Smell The Coffee” : アルバムの表題曲であり、アルバム・ジャケットのイメージをたどるような曲です。
アルバム・ジャケットの無数の赤い玉は何を意味するのでしょうか。
ベットで寝ていた人が目覚めると無数の赤い玉が押し寄せてくるのですが、この赤い玉は、心理学的には、「幸福と自覚」を意味するものだそうです。
幸福は無数に存在していますが、それには、しっかりと覚醒(自覚)していないと、その存在に気がつかないということでしょうか。
今、あるものを幸福と感じずに、幸福を追い求めても、手に入れた瞬間に次の幸福を追い求めていたのでは、常に幸福感を得られないということを意味しているともとれます。
日本にも、「果報は寝て待て」ということわざがありますが、待つ必要もなく、「そこにすでにあるので、起きて感じ取って」ということです。
8曲目の”Pretty Eyes”: 我が子のためなら、どんな犠牲をもいとわないという強い母性愛を感じる曲です。
曲調もどこまでも穏やかで、全てのものを包込むような優しさを感じることができます。
10曲目の”Every Morning”: “Pretty Eyes”を見つめながら幸福感に浸っている様子が伺えます。
この幸福な時がいつまでも続いてほしいという想いが曲調にも感じられます。
おそらく、”Dolores O’riordan Burton”は、幸福感で満たされている心境でこの曲を書いたのではないかと思われます。
精神世界に鋭く切り込む”The Cranberries”の曲
“The Cranberries”の曲は、優れたメロディーで、楽曲自体が十分魅力的で、ただ聴いていても楽しむことができますが、歌詞に耳を傾けてみると、その意味の深さに感銘を受け、その意図に深い共感を覚えます。
本作の”Wake Up & Smell the Coffee”では、母親となった”Dolores O’riordan Burton”の強い母性愛を感じます。
その想いは、子を持つ親なら誰もが共感できるものでしょう。
子育ては楽しいことばかりではないでしょうが、後から振りかえってみるとその時間というのは案外短いものです。
あれこれ分析することはやめて、今、この瞬間を生きていることの素晴らしさをもっと味わってみましょうという”Dolores O’riordan Burton”からのメッセージです。
ちょっと、”The Cranberries”を分析しすぎてしまいましたが、曲をあるがままに味わっていただくのが一番かも知れません。
“Don’t Analyse!”
>”The Cranberries”に関する記事はこちらから
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