The Cranberries(クランベリーズ)の3作目のアルバムです。
前作のアルバム”No Need To Argue”の代表曲”Zombie”の重厚な音と、反戦の想いを引き継ぐアルバムです。
アルバム・タイトルの”Departed”は、「旅立った人(故人)」の意味で、敬愛する大切な人への想いを綴った作品です。
1作目の”Everybody Else Is Doing It So Why Can’t We”、そして2作目の”No Need To Argue”の記録的なセールスで自信を深め、その名も”No Need To Argue Tour”という世界的なツアーを敢行し、そのツアー中にレコーディングを完成させた”The Cranberries”の飛躍の一枚です。
<曲目リスト>
- Hollywood
- Salvation
- When You’re Gone
- Free To Decide
- War Child
- Forever Yellow Skies
- The Rebels
- I Just Shot John Lennon
- Electric Blue
- I’m Still Remembering
- Will You Remember?
- Joe
- Bosnia
反戦への想いと旅立った愛する人への追悼
1曲目の”Hollywood”: 重厚なサウンドは、前作のアルバム”No Need To Argue”の代表曲”Zombie”のあの音です。
「ハリウッド」という華やかな映画の世界と、現実は違うのだという”Dolores O’riordan Burton”の強い想いが込められています。
現実を決して悲観的にとらえているのではなく、現実とありのままに向き合って、明日に向かって”Departed”「飛び立って」行こうというメッセージが込められています。
2曲目の”Salvation”: 「救済」。
ヘロインやコカインに依存して幻想の世界に陥って「現実逃避」している子供たちへ、心労で夜も眠れない両親とともに救済の手を差し伸べる曲です。
3曲目の”When You’re Gone”: 愛する人との別れることの切ない想いを綴った曲です。
喪失感に満ちた歌詞以上に、切ないのは、美しくも悲しいメロディーと哀愁を帯びた”Dolores O’riordan Burton”の歌声です。
4曲目の”Free To Decide”: 「現実逃避」や「喪失感」に悩まされている気持ちを吹き飛ばすような爽快な曲です。
加えて、楽曲の素晴らしさも、本作のハイライトといえる出来映えです。
“Free To Decide”:「自分で決められる」ことが人生最大の喜びであると歌っています。
ロシア(”To the Faithful Departed”が発表された1996年は、ロシアではチェチェンとの間で民族的な紛争がありました)やサラエボで紛争が絶えない状況の中、些細なことに執拗に心を砕かれることへの愚かさに警鐘を鳴らしています。
5曲目の”War Child”: “Dolores O’riordan Burton”が、あの反戦歌である”Zombie”を書いたきっかけは、アイルランド紛争における爆弾事件で3歳の男の子が亡くなったことへの怒りからでした。
そして、その後も、”Dolores O’riordan Burton”は、”U2″の”Bono”等とともに、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争の渦中にいる子供たちへのチャリティー活動をしています。
この”War Child”は、反戦歌であることは間違いありませんが、曲そのもののホーン・セッションやストリンングスを使った美しい旋律は心を揺さぶられるものでしょう。
7曲目の”I Just Shot John Lennon”: “Zombie”以上に衝撃的な曲のタイトルです。
“Dolores O’riordan Burton”にとって”John Lennon”は、音楽活動における”Faithful Departed”「忠実なる旅立った人」の一人なのでしょう。
曲のエンディングの銃声が生々しいです。
10曲目の”I’m Still Remembering”: 旅立った愛する人や、偉大なる故人をいつまでも忘れずに胸に刻めつける残されたものの想いを歌った曲です。
“Kurt Donald Cobain”(”Nirvana”:「ニルヴァーナ」のボーカリスト兼ギターリスト)や “JFK”:「ジョン・F・ケネディ大統領」への追悼の意を込めた曲です。
甘美なメロディーは、数ある”The Cranberries”の名曲の中でも屈指の作品です。
12曲目の”Joe”: とりわけマンドリンの奏でる音が美しい曲です。
“Joe”は、”Dolores O’riordan Burton”の祖父のことのようです。
紛争への怒りから、全てを包込む慈愛の心へ
“Zombie”で、アイルランドの紛争への怒りをあらわにした”Dolores O’riordan Burton”が、やがては、ロシアやバルカン半島の紛争までに視界を広げたことと、”Sunday Bloody Sunday”で、アイルランド紛争を取り上げた”U2″が、今でも、世界中で紛争が続くことへの抗議として、この曲を歌い続ける姿とだぶります。
しかし、”Dolores O’riordan Burton”が、子を持つ母親として、子供たちの将来を案ずる表現方法は変わってきています。
次作のアルバム”Bury The Hatchet”のシングル曲の”Animal Instinct”や、次々作の”Wake Up & Smell the Coffee”の”Never Grow Old”などは、「怒り」という表現は影を潜め、慈愛に満ちた母性の優しさを感じます。
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