“U2″の4作目のアルバムです。
元”Roxy Music”の”Brian Eno”をプロデューサーに迎え、”U2″の音がどのように変わるのか不安視された”The
Unforgettable Fire”でしたが、これまでの”U2″のイメージは壊さず、より重厚な研ぎ澄まされた音を表現しました。
収録曲には、”4th Of July”「独立記念日」や、”Elvis Presley”「エルビス・プレスリー」、”MLK”(Martin Luther King, Jr.)「マーティン・ルーサー・キング・ジュニア」など、アメリカ市場を意識した曲がありますが、その音はまさにアイルランド・ロックのものです。
“Brian Eno”により作られた”U2″の音は、今後の”U2″の音の原点となっていくのです。
<曲目リスト>
- A Sort Of Homecoming
- Pride (In The Name Of Love)
- Wire
- The Unforgettable Fire
- Promenade
- 4th Of July
- Bad
- Indian Summer Sky
- Elvis Presley & America
- MLK
重厚で研ぎ澄まされた”U2″サウンド
1曲目の”A Sort Of Homecoming”:”U2″の音に迫力が加わりました。
前作のアルバム”War”に収録されている”U2″の初期の代表曲”Sunday Bloody Sunday”のオリジナル・バージョンを聴いてみると、今”U2″がライブでこの曲を演奏している音と随分違っていることに気がつくでしょう。
オリジナル・バージョンでは多様な楽器の色々な音が使われていましたが、今”U2″がこの曲を演奏するときには、色々な音は省かれています。
それでいながら、音の厚みは増しています。
音の種類が少なくなっているのに、音の厚みが増すという二律背反する技を”Brian Eno”のプロデュースのもと見事に成し遂げています。
そして、この音が、今後の”U2″の音の基礎になっています。
2曲目の”Pride (In The Name Of Love)”:これまでの”U2″の音楽性をもう一段引き上げた曲です。
この曲だけでも、”Brian Eno”の功績は大です。
“U2″のサウンドが、これまでにも増して重厚になり、研ぎ澄まされた音はより”U2″の音楽観にかなっていると思います。
4曲目の”The Unforgettable Fire”:表題曲でもあるこの曲は、キーボードの美しいメロディが”Unforgettable”(忘れがたい)ほどの輝きを持っています。
7曲目の”Bad”:静けさの中で、”The Edge”の空気をも切り裂くようなギターが奏でられます。
緊張は否が応でも高まってきます。
“Bono”が押し殺すような歌声で淡々と歌っていながらも、緊迫した空気はエネルギーをどんどん蓄積していくかの様相を深めています。
クライマックスが近づいています。
今まで蓄えたエネルギーが放出される時が来ました。
“I’m Not Sleeping” “U2″は眠ってなんかいませんでした。
10曲目の”MLK”:アフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者として活動したキング牧師の名で知られるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアを称える歌です。
「I Have a Dream」で知られる有名なスピーチを行い、1964年のノーベル平和賞を受賞しています。
音楽活動を通して世界の平和を訴えている”Bono”にもノーベル平和賞を贈りたいほどです。
今後の”U2″サウンドを作り出す転機となったアルバム
“The Unforgettable Fire”は、U2″の転機となるアルバムです。
「鬼才」”Brian Eno”のプロデュースの新作は、実際に仕上がるまでにどんな音になるのか想像もできませんでした。
ただひとつ言えることは、前作までの作品の延長線上の音は作られることはないだろうということです。
そう言う意味では、リスクを冒した賭けだったと思います。
しかし、その賭けは、見事に良い結果をもたらしました。
“U2″の音をより強固なものとするばかりか、今後の”U2″の音作りの指針となるものがこの時期に出来上がりました。
そして、このアルバムで得た力強さと自信を持って、”U2″は記録的な観客動員数を誇る世界的なビック・バンドとなっていくのでした。
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