“10cc”3作目のアルバムで、誰もが認める(私は認めていません。もっと良い曲がたくさんあります。)代表曲の”I’m Not in Love”が収録されているアルバムです。
本作のアルバム・テーマは、映画です。
“The Original Soundtrack”と言っても、ある映画のサウンド・トラック版というわけではありません。
「架空の映画のサウンドトラック」という”10cc”ならではのウィットです。
こんな魅力的な曲がずらりと並ぶ映画といのも観てみたいものです。
<曲目リスト>
- Une Nuit A Paris (Part 1) / The Same Night In Paris (Part 2) / Later The Same Night In Paris (Part 3)
- I’m Not In Love
- Blackmail
- The Second Sitting For The Last Supper
- Brand New Day
- Flying Junk
- Life Is A Minestrone
- The Film Of My Love
1本の映画を見た後の爽快感
1曲目の”Une Nuit A Paris”:「パリの一夜」という3曲からなる組曲です。
歌詞の中で、”One night in Paris, Is like a year in any other place”「パリで過ごす一夜は、他のどの場所の一年に相当する」と、パリの魅惑を強調しながら、「One night in Paris, May be your last!!!」「パリの一夜は、あなたの最後となるかもしれない」などと警告めいた言葉を発するのも”10cc”お得意のウィットでしょう。
その後の、”I’m Not in Love”への導入部という意味では、これ以上ないお膳立てです。
2曲目の”I’m Not In Love”:単独で聴いても十分すぎるくらい美しい曲ですが、是非、サウンド・トラック版のアルバムの1曲として聴いてほしい曲です。
架空の映画の映像をあなたなりにイメージして、映画のワン・シーンを思い浮かべながら味わってください。
>曲”I’m Not in Love”に関する記事はこちらから
3曲目の”Blackmail”:「邦題:ゆすり」、美しいメロディーの名曲”I’m Not In Love”を、よくも不穏な空気をもった曲で、はさんだものです。
美しい世界に見え隠れする”10cc”の風刺のセンスを感じずにはいられません。
間奏のスライド・ギターのソロも”10cc”のスタジオ・ミュージシャン時代に培った高い演奏技術のなせる技です。
4曲目の”The Second Sitting For The Last Supper”:「邦題:2度目の最後の晩餐」、仰々しいタイトルにも思えますが、曲の価値は、それに匹敵するぐらいのものがあります。
前作のアルバム”Sheet Music”や、前々作のアルバム”10cc”(セルフ・タイトル)に比べて、音の厚みが格段に進歩した印象があります。
間奏のギターのソロの軽々と弾きこなす演奏技術は、聴いていて安心感があります。
“10cc”の楽曲の素晴らしさとシニカルな歌詞を影で支えているのは、確かな演奏技術だと思います。
7曲目の”Life Is A Minestrone”:「邦題:人生は野菜スープ」、風変わりなタイトルは、何か強力なメッセージを感じずにはいられません。
歌詞の中に、”Life Is A Minestrone”と対比するかのように、”Death is a Cold Lasagne”「死とは、冷たいラザーニャ」と続きます。
私にとって、イタリア料理の中でもとりわけ大好きな「ラザーニャ」ですが、熱々の「ベシャメルソース」、「ミートソース」、「ラザニア」、「チーズ」を何層も重ねることによって得も言われずの風味が至福の時を約束してくれます。
しかし、それが冷たくなってしまっては、興ざめです。
死とは、それほど味気ないものという意味でしょうか。
一方、曲の方は秀逸で、”10cc”の類まれなるポップ・センスをいやが上にも感じます。
8曲目の”The Film Of My Love”:映画のフィナーレを飾る曲です。
“10cc”の映画好きな側面を物語る、映画を賛美するかのような曲です。
幸福感が漂う音楽は、この映画の結末がハッピー・エンドであったことを物語っているようです。
ライブでの演奏も楽しい
この”The Original Soundtrack”を足掛かりに、”How Dare You”、”Deceptive Bends”、”Bloody Toursit”と、ロック界に残るアルバムを次々と世に送りだした”10cc”ですが、良い作品を作り続けるのに一役買ったのは、その演奏技術の高さです。
それは、ライブの映像を見ていただければ良くわかります。
ライブの演奏も、スタジオの録音と比べてもクオリティを落とすことなく、ステージ上で、聴衆を魅了することも十分心得ています。
“Rubber bullets”で、味わってみてください。
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