“10cc”2作目のアルバムです。
前作のデビュー・アルバムの”10cc”(セルフ・タイトル)は、”The Beatles“の”Oh! Darling“のパロディである”Donna“など奇をてらったようなところがありましたが、本作”Sheet Music”では、独創性豊かな作品が並びます。
そうは言っても”10cc”特有のシニカルな歌詞や曲調は健在です。
<曲目リスト>
- The Wall Street Shuffle
- The Worst Band In The World
- Hotel
- Old Wild Men
- Clockwork Creep
- Silly Love
- Somewhere In Hollywood
- Baron Samedi
- The Sacro Iliac
- Oh Effendi
パロディは封印、真っ向勝負の王道ロック
1曲目の”The Wall Street Shuffle”:パロディでもなく、コミカルな曲でもない”10cc”真っ向勝負の王道ロックです。
ボーカルは、デビュー・アルバムでシンガーとしての出番が少なかった”Eric Stewart”です。
そして、低音のバック・コーラスは、”Graham Gouldman”です。
後の、新生”10cc”(5作目のアルバム”Deceptive Bends”より)によるコンビです。
2曲目の”The Worst Band In The World”:アルバム発表当時の邦題は、「とってもイカしたイモ・バンド」でした。
「とってもイカしたイモ・バンド」とは、”10cc”自身のことを称したものですが、勿論、逆説的な意味で彼らの自分たちの音楽に対する自信を感じさせます。
ひとつの曲の中で、曲調が目まぐるしく変わる”10cc”お得意の技法です。
こうしたシニカルな曲には、この人の歌声が欠かせないでしょう。
ボーカルは、”Lol Creme”です。
3曲目の”Hotel”:静かな始まりから、突如ラテンのリズムにのせ”Let’s Buy Hotel”、”Let’s Get a Yacht”と歌い始めます。
金に物を言わせて不動産を買いまくった日本のバブル期を思わせます。
曲中では、”Yankee Go Home”と言ってますが、バブル期の日本人も当時の教訓は忘れ中国人観光客を「爆買い」と揶揄するのはいかがなものでしょう。
4曲目の”Old Wild Men”:この美しい調べにのせて歌うのは、ファルセット美声の持ち主、”Kevin Godley”です。
間奏のギターの哀愁を帯びた音色が心を打ちます。
6曲目の”Silly Love”:”10cc”初期作品の中で最もハードな曲です。
ボーカルは、”Lol Creme”で、曲の途中で合いの手のように加わるボーカルは、”Eric Stewart”です。
間奏の”Eric Stewart”のキレのあるギター・ソロが曲の厚みを増しています。
7曲目の”Somewhere In Hollywood”:映画好きの”10cc”が、次作の映画をテーマにしたアルバム”The Original Soundtrack”に先駆けて作った映画をテーマにした曲です。
前奏には、”The Beatles”の”The Long And Winding Road”のメロディが使われています。
華やかなハリウッドの情景を美しい歌声で歌い上げるのは、やはり”Kevin Godley”です。
9曲目の”The Sacro Iliac”:美しいメロディが全編に渡って流れる私がこのアルバムでの一番のお気に入りの曲です。
10曲目の”Oh Effendi”:軽快なテンポの曲を珍しく”Kevin Godley”がボーカルを担当しています。
そして、曲調が変わってファルセットの部分を”Eric Stewart”が歌っています。
いつもと役割が逆転しているような気がします。
要は、誰がどのような役割を担っても聴衆の期待以上にこなす実力の持ち主の集まりだということです。
全員がボーカル多彩な才能の持ち主
前作のアルバム”10cc”(セルフ・タイトル)では、主に”Lol Creme”がボーカルを務める曲が大半でしたが、もともとメンバー全員が相当の実力の持ち主でしたから、このアルバム”Sheet Music”でその実力を存分に見せつけたのではないでしょうか。
これ以後、他のメンバーの歌声を聴く機会はますます増えていくことになるのですから楽しみは尽きないでしょう。
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