前作”Technique”で、エレクトリック・ポップの頂点を極めた”New Order”でしたが、本作”Republic”では、その路線をきっぱりと捨てています。
1曲目の”Regret”で、”It’s Nothing I Regret”と高らかに歌っているように、後悔はないのでしょう。
前3作の”Low Life”、”Brotherhood”、”Technique”で培った楽曲の素晴らしさで、オーソドックスな音楽でも堂々勝負できるバンドと着実になってきました。
<曲目リスト>
- Regret
- World
- Ruined In A Day
- Spooky
- Everyone Everywhere
- Young Offender
- Liar
- Chemical
- Times Change
- Special
- Avalanche
エレクトリック・サウンド → ギター・サウウンドの一大ムーブメント
1曲目の”Regret”:「”New Order”の音が変わった。」
そう感じずにはいられない程の衝撃でした。
ギター・サウンド全開。
エレクトリック・ポップ・バンドの趨勢なのでしょうか。
その芽生えは、1984年にすでにありました。
“Human League”が、”Lebanon”を発表した時が、最初の兆候だったと思います。
そして、Ultravox”が、”One Small Day”をリリースして、しばらくして、”Simple Minds”が、 “She’s a River”を世に送り出す頃には、一つのムーブメントになった感があります。
2曲目の”World”を聴いた時にも衝撃が走りました。
「この明るい曲調は、何なんだ。」
おまけに、ボーカルの”Bernard Sumner”が、女性のコーラスと楽しそうな掛け合いがあります。
“Joy Division”時代や、初期の”New Order”から比べると、隔世の感を禁じえません。
3曲目の”Ruined In A Day”:ボーカルの”Bernard Sumner”の今まで問題とされていなかった(”New Order”の音楽性自体に注目が集まっていた)歌唱力が、格段に向上したという実感があります。
演奏技術も向上し、従来の無機的な音に暖かみが感じられるようになりました。
シンプルな楽曲の美しさが、そのことを強く感じずにはいられないでしょう。
7曲目の”Liar”:私が、このアルバムの中で一番のお気に入りの曲です。
曲自体は、オーソドックスで、ポップ・ミュージックの世界でいろいろな先駆的な試みをして、後進のアーティストに多大な影響を与えた”New Order”の曲の中で、特別な試みがあったわけではない曲だと思います。
しかし、特別な音楽手法を駆使するわけでもなく、最先端の音楽ムーブメントを意識したわけでもないこの曲が、これだけ魅力的に仕上げたことが、”New Order”の特別な試みだったとかたく信じています。
エレクトリック・ポップの最高到達点とも言うべき、前作の”Technique”の路線を踏襲することもなく、何の未練もなく新たな音楽を切り開くのは、潔いと言うしかないでしょう。
“Liar”の曲中で、”Cause I can’t Stand the Music Always stopping”「いつまでも停滞しているような音楽にはうんざり」というのが彼らの本音なのでしょう。
エレクトリック・ポップから最も遠い普遍的な音楽
その後、”New Order”は、”Get Ready”、”Waiting for Sirens’ Call”で、やや”Technique”以前のサウンドに回帰していくように思えるのですが、今振り返ってみると、この”Republic”が、最も、エレクトリック・ポッップや、初期”New Order”のサウンドに遠いように思えます。
そう言う意味では、幅広い音楽ファンに受け入れられる音ではないかと思います。
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