OMDのデビュー・アルバムであり、セルフ・タイトルの作品です。
バンド名の”Orchestral Manovers In The Dark”の略称である”OMD”という表記は、アルバム・ジャケットには、表記されていません。
創立メンバーのひとり”Andy McCluskey”のソロ・プロジェクト化する頃の作品”Sugar Tax”あたりから、この”OMD”という表記が、アルバム・ジャケットに記載されるようになりました。
(例外的に、彼らの4作品めとなるアルバム”Dazzle Ships”には、”OMD”の文字があります。)
“Sugar Tax”よりも前の作品であるベスト版や、リミックス版には、”OMD”と表記する場合がほとんどで、”Orchestral Manovers In The Dark”という記述は見かけなくなりました。
レコード会社としても商業的にも、”OMD”の方が、扱いやすいでしょうが、デビュー・アルバムに、この長いバンド名をセルフ・タイトルにしたアルバムを発表したことに彼らのバンド名のこだわりが感じられます。
アルバム収録曲でシングル・カットもされた”Electricity”と”Messages”は、典型的なエレクトリック・ポップですが、その他の曲は、エレクトリック・ポップというジャンルを超えた彼らの強烈な音楽性を感じます。
<曲目リスト>
- Bunker Soldiers
- Almost
- Mystereality
- Electricity
- The Messerschmitt Twins
- Messages
- Julia’s Song
- Red Frame/White Light
- Dancing
- Pretending To See The Future
エレクトリック・ポップのバイエル
1曲目の”Bunker Soldiers”: “Orchestral Manovers In The Dark”のデビュー・アルバムの記念すべき第1曲は、やはり、王道のエレクトリック・ポップでした。
アルバム・ジャケットの幾何学的な模様も、デジタル音楽の匂いを感じます。
しかし、”OMD”が、単なる流行りのエレクトリック・ポップのバンドではないということが、このあとのアルバムの曲を聴くに連れて解明されていくことでしょう。
2曲目の”Almost”: この静寂の中から響き渡る幻想的な音こそ、”OMD”の音の特徴だと思います。
“Electricity”の力づくでグイグイと引っ張るエレクトリック・ポップも”OMD”の魅力のひとつだと思いますが、こうした曲にこそ、”OMD”の持つ魅力、底力を感じさせられます。
アーティストとしては、世に認知されるためのスマッシュ・ヒットは必要な要件でしょうが、自らをもっとも表現したい曲は、こうしたアルバムの中にひっそりと存在するものです。
「全曲シングル・カット可能」とか「捨て曲なし」といった評価は、アーティストの本望ではないでしょう。
4曲目の”Electricity”: エレクトリック・ポップ炸裂といった印象の絵に書いたようなエレクトリック・ポップです。
“Andy McCluskey”の単調なベース・ギターに、”Paul Humphreys”のピアノ風のキー・ボードが重なり、音としては、初期エレクトリック・ポップ特有のチープな音ではありますが、それだけに、その鮮烈なメロディーは、強烈に心に突き刺さります。
そして、間奏部分は、”Andy McCluskey”のベース・ギターが踊りだすようなリズムを刻みます。
6曲目の”Messages”: キー・ボードと電子ドラムで、リズムを刻み、本来はリズム部分を担当するベース・ギターがメロディーを奏でるという構成です。
この構成どこかで見たような気がします。
まさに、”Perfect Kiss”をはじめとする”Low Life”時代の”New Order”です。
“New Order”のベーシスト”Peter Hook”が、ライブで見せるギター・プレイは、まさにリード・ギターリストです。
この”Messages”という曲は、エレクトリック・ポップのもつ幻想的で夢見るような音を見事に表現しているエレクトリック・ポップのお手本のような曲です。
これから、エレクトリック・ポップを聴こうという人のための、最適な入門曲「エレクトリック・ポップのバイエル」とも呼べる曲です。
7曲目の”Julia’s Song”: 背景の音こそ、エレクトリック・ポップのそれですが、力強く野太いベース・ギターやピアノが奏でる音は、十分ファンキーで、”OMD”が、デジタル音源を駆使しようとも、単なるエレクトリック・ポップ・バンドとくくるのは、いささか早急と言える所以です。
華やかなエレクトリック・ポップの中にも垣間見ることができる音楽性
“Electricity”や、”Messages”といったエレクトリック・ポップの王道ともいえる曲を引っさげて華々しくデビューした”OMD”ですが、その後、次作のアルバム”Organisation”では、シングル曲の”Enola Gay(邦題:エノラゲイの悲劇)”で、その路線を引継ぎ、エレクトリック・ポップの寵児となりました。
その後も、4作目のアルバム”Dazzle Ships”の”Telegraph”で、エレクトリック・ポップは、頂点を迎え、5作目の”Junk Culture”で、楽曲の素晴らしさが際立っていました。
“OMD”は、エレクトリック・ポップというひとつのムーブメントの中で、もともと持っていた音楽性を培ってきました。
その音楽性は、このデビュー・アルバムの華々しいエレクトリック・ポップの各曲の中にも垣間見ることができます。
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