“Roxy Music”の6作目のアルバムです。
“Manifesto”「宣言、声明」というこの言葉を聞いたのは、”Roxy Music”のこのアルバム・タイトルが初めてでした。
それから、しばらくして、この言葉をよく耳にするようになったのは、当時の民主党が、与党になる時の選挙公約として使われた時です。
厳密には、「選挙公約」”Election Manifesto”と言うべきものです。
当時、”Roxy Music”は、このアルバムで何を宣言したかったのでしょうか。
ポップ路線への転換の宣言だったのでしょうか。
前作の個性的なアルバム”Siren”と、次作の大衆化路線の”Flesh and Blood”では、”Roxy Music”の音楽が大きく異なります。
そのギャップを埋めるのが、この”Manifesto”だと思います。
<曲目リスト>
- Manifesto
- Trash
- Angel Eyes
- Still Falls The Rain
- Stronger Through The Years
- Ain’t That So
- My Little Girl
- Dance Away
- Cry, Cry, Cry
- Spin Me Round
前衛的なサウンドとポップでダンサンブルなサウンドの融合
1曲目の”Manifesto”: アルバム・ジャケットが、この曲の雰囲気を良く表現しています。
このアルバム全体に言えることですが、ダンサンブルであるということです。
アルバム・ジャケットに写っている男女(マネキン)の服装は、非常に前衛的です。
“Bryan Ferry”のあの独特な歌い方は、”Siren” 以前のものです。
“Flesh and Blood”以降は、随分とくせがない滑らかなボーカルに変貌しています。
2曲目の”Trash”: 明らかな”Roxy Music”の音の変化です。
ポップ路線第一弾は、この”Trash”です。
本作”Manifesto”では、従来の個性的な”Roxy Music”とポップでわかりやすい”Roxy Music”が混在しています。
3曲目の”Angel Eyes”: “Flesh and Blood”より、さらにポップではないかと思うほど、ソフトなタッチの曲です。
メンバーの衣装も、ファッショナブルで、曲の雰囲気にマッチしています。
4曲目の”Still Falls The Rain”: 一曲の中で、新旧の”Roxy Music”の音が混在しています。
Aメロ部分は、新しい”Roxy Music”の甘美なメロディーが聴けます。
途中、盛り上がりを見せるにつれ、アルバム”Country Life”や”Siren”の音が蘇ってきます。
7曲目の”My Little Girl”: 前奏の明るいギターの音を聴いただけで、華やいだ曲が展開される予感がします。
こんな爽やかな、コーラスが”Roxy Music”の音楽から聴けるなど、ちょっと前では、想像できませんでした。
8曲目の”Dance Away”: “Roxy Music”ポップ・ミュージック最終章は、”Dance Away”です。
前衛的なロック・ミュージックの殻を脱ぎ捨て、見事に、王道のロック・ミュージックに転身しました。
大人の洗練されたロック・ミュージック”Flesh and Blood”、”Avaron”への準備は万全です。
9曲目の”Cry, Cry, Cry”: ここまで来ると完全に吹っ切れたという印象です。
もう、”Roxy Music”の音楽は、一部の熱狂的なファンだけのものではなくなりました。
もはや、一部の熱狂的なファンのものではなくなった”Roxy Music”
個性的で、独創的な”Roxy Music”の音楽が、ポップ・ミュージックに羽化寸前の「さなぎ」のようなアルバムです。
次作の”Flesh and Blood”や、”Avalon”が、誰が聴いても名曲だと実感できる曲が多い中、新旧の”Roxy Music”の音楽の魅力が見え隠れする特異的なアルバムとなりました。
前作の”Siren”と、次作の”Flesh and Blood”とでは、音楽性がかなり異なる結果となりましたので、本作”Manifesto”は、どういう変遷を経て、”Roxy Music”の音楽が変わっていったのか、その軌跡をたどることのできる貴重な一枚となったのではないでしょうか。
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