Sade(シャーデー)の4作目のアルバムです。
デビュー当時から、”Your Love is King”など、”Love”「愛」をテーマとした曲やアルバムを世に送り出し、一貫して、「愛」を歌い続けてきた”Sade”が満をじして発表したのが、その名も”Love Deluxe”です。
究極の愛を追求したアルバムです。
初期の”Sade”は、華やかなサウンドで軽快な曲調の曲もありましたが、後期の”Sade”は、余分な音を削ぎ落とした研ぎ澄まされた音が特徴的です。
その転換期となったアルバムがこの”Love Deluxe”です。
“Deluxe”というのは、「豪華な」とか「贅沢な」という意味ですが、いろいろと飾り付けたりすることが贅沢ではなく、余計なものを取り除いて本質的な部分を深くあじあうことが本当の贅沢というものでしょう。
<曲目リスト>
- No Ordinary Love
- Feel No Pain
- I Couldn’t Love You More
- Like A Tattoo
- Kiss Of Life
- Cherish The Day
- Pearls
- Bullet Proof Soul
- Mermaid
在り来たりの音楽とは一線を画す”Sade”の音楽
1曲目の”No Ordinary Love”: “No Ordinary”:「在り来たりのものでない」=「贅沢な」ものに通じるものだと思います。
“No Ordinary”「ただならぬもの」が、いくつかあります。
楽曲の素晴らしさ。
“Sade Adu”の歌声の艶めかしさ。
そして、ライブ・パファーマンスは、アルバムのオリジナル・バージョンを凌ぐ、卓越したエンターテインメントです。
ロング・ドレスに身をまとった”Sade Adu”の容姿や、ステージで舞うように歌う姿は何と妖艶なのでしょう。
2曲目の”Feel No Pain”: “Mama been Laid off”、”Papa been Laid off”:「母も父も職を失い」という絶望的な歌詞で始まるショッキングな曲です。
“Feel No Pain”:「痛みも感じない」ほどの絶望的な境地なのでしょう。
“Lord Have Mercy”:「神よ慈悲があるならば」と懇願せずにはいられない状況から、自らの力で脱出することは中々困難なことでしょう。
5曲目の”Kiss Of Life”の人生を謳歌している曲と対象的です。
同じ人生の中に起きている事象なのに、受け止め方で180度変わってくるから不思議です。
5曲目の”Kiss Of Life”: 文字通り解釈すると「人生のキス」ですが、「人生の祝福」と言った方がしっくりくるかもしれません。
歌詞の内容も、”There Must Have been an Angel by My Side”:「そばに天使がいてくれる」とか、”Sky is Full of Love”:「空は愛であふれている」など幸福感に満ちています。
「人生は、(何もかもが)祝福されている」、「愛に満ち溢れている」と人生讃歌の曲です。
6曲目の”Cherish The Day”: ギターが奏でる悲しげな音色が印象的な曲です。
あの傑作ライブの”Lovers Live”のオープニングを飾った曲です。
“Cherish The Day”:「(一日一日の日々)毎日が愛しい」というのは、祝福された人生を謳歌した人が感じるいつわりのない気持ちでしょう。
日本の一期一会にも通じるものがあります。
その瞬間瞬間を大切に生きる人が、もっとも祝福を受けるのでしょう。
7曲目の”Pearls”: “There is a Woman in Somalia Scraping for Pearls on the Road”「ソマリアで一人の女性が道端で真珠をかき集めている」。
“The Beatles”の”Eleanor Rigby”の歌詞の「結婚式の後で、教会の前の米を拾う姿」を思い出します。
“There is a Force Stronger than Nature keeps Her wil Alive”:「自然より強い力が彼女の意思を奮い立たせる」。
深遠な歌詞が、深遠なメロディーにのって流れてきます。
そんな女性の姿を見て心を痛めるのですが、どのような痛みかというと、”Like a Brand New Shoes”:「真新しい靴を履き下ろすときのような痛み」です。
額面通りに受け取るのは適切ではないでしょう。
ソマリアの過酷な運命を、どこか遠くの世界(ピカピカの靴を履ける平和で快適な世界とはまったくの別世界)のことと、どこか恥じ入る気持ちがあるのでしょうか。
デラックスな愛とは、自然よりも大きな力がもたらすもの
“Sade”のいう”Love Deluxe”とは、単に、男女のきらびやかな恋愛というものではありませんでした。
働き口のない絶望的な環境や、紛争のために食べることさへままならない惨状に心を痛め、手を差し伸べる「家族愛」、「隣人愛」、「人類愛」という深遠なものでした。
そして、「自然よりも大きな力」で、人生を祝福してくれていることへの感謝の気持ち、それこそが、”Love Deluxe”なのでしょう。
そうした「愛」を歌う”Sade”からも我々は”Deluxe”:「贅沢な」恩恵を受けています。
![]() |
新品価格 |