“Thompson Twins”の3作目のアルバムです。
“Thompson Twins”特有のリズムは、次第に影を潜めてきましたが、楽曲の質は著しい進歩をとげています。
前作の”Into the Gap”に収録されている”Hold Me Now”は、洋楽史上に残る名曲でしたが、本作の”Here’s to Future Days”には、それを凌ぐ、”Lay Your Hands On Me”、”King For A Day”が収録されています。
“Thompson Twins”の輝かしい”Future Days”(未来の日々)の幕開けです。
<曲目リスト>
- Don’t Mess With Doctor Dream
- Lay Your Hands On Me
- Future Days
- You Killed The Clown
- Revolution
- King For A Day
- Love Is The Law
- Emperor’s Clothes (Part 1)
- Tokyo
- Breakaway
独創的なリズムは影を潜める一方、楽曲の質は格段に向上
1曲目の”Don’t Mess With Doctor Dream”: 木琴こそ使われていませんが、リズム・バンドぶりは健在です。
ただ、前作”Into the Gap”までの一見して(一聴して)”Thompson Twins”だなというわかりやすさは影を潜めたように感じます。
楽曲の良さは、このアルバムで格段に進歩しています。
いつまでも、型にはまったリズムは必要ないということでしょうか。
2曲目の”Lay Your Hands On Me”: なるほど、これほどの曲が書けるのなら、これまでの自分たちの音楽スタイルにいつまでもしがみついている必要がないということでしょうか。
それでも、嬉しいことに、この曲は、”Alannah Currie”が、木琴を演奏しています。
リズムも、”Into the Gap”の頃の面影がチラチラのぞいています。
5曲目の”Revolution”: “The Beatles”の”Revolution”をカバーしています。
比較的、原曲を忠実に再現していますが、そこは、”Thompson Twins”華やかなリズムで、カラフルな”Revolution”に仕上がっています。
6曲目の”King For A Day”: 木琴こそ使われていますが、ほんのスパイス程度の起用法です。
リズムの源流は、王道のポップ・ソングのそれです。
「それがどうした」と言わんばかりの楽曲の質の高さです。
9曲目の”Tokio”: どうやら、”Thompson Twins”は、日本びいき(東洋的なものに関心がある)のアーティストのようです。
初期のヒット曲”Lies”でも、東洋的な音楽を織り交ぜていました。
しかし、曲の最後のドラの音は、中国の太鼓を連想させます。
恐らく、東洋的なイメージのものを一緒くたにしているものと思われます。
東京オリンピックも近いですから、「おもてなし」の心で正しい日本の文化を世界に向けて発信していく必要があるとの”Thompson Twins”から警鐘を鳴らす一曲です。
楽曲の良さを隠し味のリズムでサポート
“Thompson Twins”の独特のリズムの中核をなす木琴も、曲にアクセントを加える控えめな存在となり、特有のリズムを全面に押し出すようなことはなくなりました。
“Depeche Mode”から電子を取り除いたような一抹の寂しさを覚えます。
その代わり、楽曲の良さは著しい進歩を見せ、”Thompson Twins”の魅力が半減したわけではありません。
彼ら特有のリズムを全面に押し出すだけではなく、楽曲の良さを隠し味程度のリズムで支える新しい手法で”Thompson Twins”の音楽を楽しんでみるのも一興でしょう。
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