Roxy Music(ロキシー・ミュージック)の2作目のアルバムです。
これまでも数々の物議を醸し出してきた”Roxy Music”の歴代のアルバム・ジャケットの中でも、話題のモデルを起用した群を抜いて芸術性の高いアルバム・ジャケットです。
是非、表面と裏面を見開いた状態で鑑賞してほしい作品です。
出典:YouTube
アルバム・ジャケットのモデルを務めるのは、「男装の麗人」とも呼ばれた”Amanda Lear”:「アマンダ・リア」です。
性転換者であるという噂もあります。
アルバム裏面のタクシー・ドライバーは、勿論、”Bryan Ferry”です。
“Amanda Lear”のその真相を知っているかのような笑みを浮かべています。
そして、もう一つの話題は、キーボード奏者の”Brian Eno”の脱退でしょう。
彼の脱退は、その後の”Roxy Music”の音に確実な変化をもたらしたことは事実でしょう。
3作目となる次作のアルバム”Stranded”の代表曲となる”A Song For Europe”では、前衛的な要素は影を潜め、ヨーロッパの叙情的な音への変化が見れます。
出典:Prezi
何しろ、彼の作り出す音は、前衛的でありますが、その音だけでなく、その出で立ちも十分に前衛的で、フロント・マンの”Bryan Ferry”からすると、「インスタ蠅」する存在であったのかもしれません。
<曲目リスト>
- Do The Strand
- Beauty Queen
- Strictly Confidential
- Editions of You
- In Every Dream Home A Heartache
- The Bogus Man
- Grey Lagoons
- For Your Pleasure
天才と鬼才の狂演!
1曲目の”Do The Strand”: 音楽性も、歌唱法も独創性豊かな”Bryan Ferry”が、何とダンスまで創造してしまった。
その名は、”Strand”。
“Tango”や”Fandango”には、”Tired of” “Fed up with”:「うんざり」ということですが、滅多に笑わない「モナリザ」や「スフィンクス」も浮かれて躍る”Strand”というのはいったいどんなダンスなのでしょう。
“Bryan Ferry”にとって、うんざりと言えるのは、何も既存のダンスだけではないでしょう。
既存のロック・ミュージックもしかりで、デビュー作の”Roxy Music”(セルフ・タイトル)とこの”For Your Pleasure”は、既成のロック・ミュージックの概念を打ち破るようなブレイク・スルーとなった作品です。
そして、また、この”DO The Strand”という曲は、”Roxy Music”のライブ・パフォーマンスには欠かせない曲でもあります。
2曲目の”Beauty Queen”: 軽やかに歌うように刻まれるベース・ギターのリズムは、さながら、”The Beatles”の最高傑作アルバムの”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”に収録されていた”With A Little Help From My Friend”の”Paul McCartney”のプレイのようです。
そして、前奏のトレモロのような効果音は、”Brian Eno”の仕業でしょうか。
彼が、このアルバムを機に脱退してからは、”Roxy Music”の音に見かけなくなった現象です。
後に、鬼才”Brian Eno”が、”U2″のプロデュースを務めると聞いたときには、”U2″が壊れるのではないかと心配しました。(結果的には、彼のプロデュース作品”The Unforgettable Fire”は、現在の”U2″の音楽性を決定つけるような大きな足がかりとなった作品となりました。)
>アルバム”The Unforgettable Fire”に関する記事はこちらから
6曲目の”The Bogus Man”: こちらも、タイトな曲調で、ライブ演奏が映える一曲です。
“Roxy Music”のライブ・アルバム”Viva! Roxy Music”に、”Do The Strand”らと共に、収録されていました。
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7曲目の”Grey Lagoons”: ピアノの伴奏とともに、歌いだすバラード調の雰囲気は、”A Really Good Time”(アルバム”Country Life”に収録)を思い起こしますが、突然のギター・ソロとともに始まるサックスとハーモニカの熱演は聴き応え十分です。
特に、”Bryan Ferry”のエモーショナルなハーモニカの演奏は必見です。
8曲目の”For Your Pleasure”: ラストを飾るのは、表題曲でもある”For Your Pleasure”です。
民族楽器を思わせる乾いたパーカッションの音に続いて、不協和音ぎみのキーボードの旋律が響きます。
やがて、ギターも、キー・ボードと同じ旋律を重ね合わせるように奏でます。
この時期の”Bryan Ferry”の歌唱方法は、本当に独特で、これでは、”King Crimson”のボーカリストのオーディションに落とされても無理はないと思えます。
そう言えば、曲のエンディングで繰り返されるこのパーカッションとキー・ボードの絡みは、何か、”King Crimson”の”Epitaph”(アルバム”In the Court of the Crimson King”:「クリムゾン・キングの宮殿」に収録)にある前衛的で壮大な空気を感じます。
しかし、この独特の歌声に、やがて慣れ心地良ささへ感じてしまうから不思議です。
“Roxy Music”の後期作品ともなれば、曲調もずいぶんと洗練され、”Bryan Ferry”の歌声もごく自然なものと変わっていくように感じがするのも、慣れのせいでしょうか。
“For My Pleasure”から”For Your Pleasure”へ
5作目のアルバム”Siren”発表後、一度は解散した”Roxy Music”が、復活後の第1弾の”Manifesto”を発表した時には、ポップ路線の音楽性の変化に戸惑いましたが、
その後の”Flesh and Blood”、”Avaron”の安定した曲作りには、多くの音楽ファンの心をつかんだように思えました。
多くの音楽ファンが悦ぶような曲作りは、まさに、”For Your Pleasure”:「聴衆が悦ぶ」音楽だと思いますが、アルバム”For Your Pleasure”の頃の音楽は、バンドのもしくは、”Bryan Ferry”が悦に浸るような”For My Pleasure”な音楽だったと感じます。
それでも、”Roxy Music”でしか表現できないような独自の音楽は、根強い”Roxy Music”ファンにとってはたまらない魅力であったと思います。
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