“Sad Cafe”のデビュー・アルバムです。
2作目の”Misplaced Ideals”と同様、初期の”Sad Cafe”のストレートなポップ・センスが表現された佳作揃いです。
アルバム・ジャケットの半裸の綺麗なお姉さんを残して立ち去る姿に、男のロマンを感じさせます。(儚い幻想にすぎませんが・・・)
2作目の”Misplaced Ideals”のおどろおどろしいアルバム・ジャケットととは、対照的です。
<曲目リスト>
- Babylon
- Shellshock
- Hungry Eyes
- Shadow On The Wall
- Black Rose
- The Further Adventures Of The Mad Alan
- Fanx Ta-Ra
- Flingus’ Holiday
- Immortal
- Sail On
- Clumbidextrous
- I Believe (Love Will Survive)
“Paul Young”の歌声が時には激しく時には優しく
1曲目の”Babylon”:前奏のギターがロックしています。
ボーカルの”Paul Young”がシャウトしています。
“Sad Cafe”の初期の音楽センスがストレートに表現されている2枚のアルバム”Fanx Ta-Ra”、”Misplaced Ideals”の幕開けに相応しい曲です。
2曲目の”Shellshock”:キーボードのセンスの良い音色が心地良い曲です。
“Paul Young”のエモーショナルな歌声が、同じく熱のこもったギターのソロとともに生えます。
別に洗練された音でなくても、センスの良さというものは自ずとあぶり出されるものです。
もともと、”Sad Cafe”は、そういうものを持っていたのです。
誰かに味付けされる必要などなかったのです。
3曲目の”Hungry Eyes”:静かな始まりの曲ですが、”Paul Young”の歌声には、曲の後半の盛り上がりを予感させる力強さが秘められています。
ピアノやストリングの美しい音色が、”Sad Cafe”の楽曲のセンスを感じさせます。
2曲目”Shellshock”と3曲目の”Hungry Eyes”は、単曲で聴いても良い曲ですが、通しで聴くとその良さが倍増します。
2曲目”Shellshock”の曲が終わると、すぐさま、3曲目の”Hungry Eyes”のアコースティック・ギターの前奏が頭の中で駆け巡ります。
皆さんの間でも、そういう感覚はありませんか。
何度も繰り返し聴いているアルバムなど、ある曲が終わると、次の曲が始まる前から、頭の中ですでに次の曲が流れ始め、実際にその曲がかかると「ああ、始まった」という安堵感があります。
ある曲から次の曲への繋がりというか流れがありますよね。
私の中では、”New Order”のアルバム”Low Life”の”Sooner Than You Think”と”Sub-culture”の連続性がまさにそれです。
“Sooner Than You Think”の曲が終わってから、間があるのですが、私の中では、その余韻が次の”Sub-culture”の前奏と完全にシンクロしています。
5曲目の”Black Rose”:激しさの中にも美しさが秘められた曲です。
メロディー・ラインの素晴らしさも抜群です。
“Sad Cafe”の魅力がストレートに伝わってくる本物志向の曲です。
本当に良い曲は、いろいろな装飾は不要です。
10曲目の”Sail On”:渋い曲ですが、音楽センスは抜群です。
大人のロックです。(ただ単に、耳に心地良い”AOR”とは一線を画します)
シングル・カットには向かないでしょうが、こんな曲がさりげなくアルバムに入っているのにも”Sad Cafe”の実力を感じます。
11曲目の”I Believe (Love Will Survive)” :次作の”Misplaced Ideals”のラストを飾る”On With The Show”にも通じる力作です。
アルバム”Fanx Ta-Ra”を締めくくるのに、相応しい大作です。
いつまでも聴いていたくなるような、壮大なエンディングです。
“AOR”に分類される前のいきいきとした”Sad Cafe”の魅力
このアルバムと、次作の”Misplaced Ideals”には、初期の”Sad Cafe”の純粋なポップ・センスがストレートに伝わってくるような気がします。
3作目の”Facades”以降、”10cc”の”Eric Stewart”のプロデュースにより、洗練された曲が多く誕生するのですが、ちょっと懲りすぎたきらいがあり、”Sad Cafe”の本来のの魅力が半減してしまった感じがします。
ただ、3作目の”Facades”は、”10cc”の”Eric Stewart”がプロデュースしたこともあり、各音楽誌の評価は高く、”Sad Cafe”というと、この3作目を代表作とする傾向があります。
そして、各4作目以降は、さらに洗練されて、”Sad Cafe”がジャンル的に、”AOR”に分類されるとようになってきました。
非常に残念です。
“Sad Cafe”は、初期のアルバム”Fanx Ta-Ra”と”Misplaced Ideals”にこそ、その魅了がたっぷりと詰まっています。
ボーカルの”Paul Young”のワイルドでソウルフルな歌声がマッチした楽曲がそこには、数多くあります。
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