“XTC”5作目のアルバムです。
前作の”Black Sea”は、”XTC”のアルバム中、最もロック色の強いものでしたが、本作は、多様な音楽が導入されています。
演奏の方もアコースティック・ギターを多用し、前作とは様変わりをみせています。
ただ、アコースティック・ギターを使っているから、音が柔らかくなったのかというと、そうではありません。
アルバム中には、ピンと張り詰めた曲が多く、アコースティック・ギターの音は、それに呼応するかのように研ぎ澄ませれた音を形作っています。
曲調も多様で、ワールドワイドの音楽から触発された曲想が展開されていると感じます。
このアルバムの音楽性の高さから、”The Beatles“のアルバムに例えるなら、”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band“ほどのクオリティを持っていると思います。
前作の”Black Sea“が、ロック・バンドとしてライブ演奏ができる最後のアルバム”Help“(またまた、”The Beratles”に例えて恐縮です)に相当しますから、”Help!”の後に、いきなり、”Rubber Soul“や、”Revolver“を経由せずに、”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”を発表してしまったということです。
何が彼らをここまで駆り立てたのでしょうか、ものすごい飛躍だと思います。
<曲目リスト>
- Runaways
- Ball And Chain
- Senses Working Overtime
- Jason and the Argonauts
- No Thugs In Our House
- Yacht Dance
- All Of A Sudden (It’s Too Late)
- Melt The Guns
- Leisure
- It’s Nearly Africa
- Knuckle Down
- Fly On The Wall
- Down In The Cockpit
- English Roundabout
- Snowman
“XTC”の金字塔、”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”の再来か
1曲目の”Runaways”:このアルバム”English Settlement”は、前作の”Black Sea”の延長線上にはないことをはっきりと示しています。
2曲目の”Ball And Chain”:この曲のギターの音で、”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”を連想してしましました。
“Getting Better”あたりの音でしょうか。
3曲目の”Senses Working Overtime”:静かな始まりですが、緊張感あふれる雰囲気です。
キャッチーなメロディですが、お気楽に曲に身を委ねるほどの軽さはないです。
5曲目の”No Thugs In Our House”:この曲です、アルバム全体を張り詰めた雰囲気にしているのは。
一度フェード・アウトしたかたと思いきや、再び息を吹き返すあたりは、この曲の生命力の強さを感じさせずにはいられません。(とにかく力強い曲です)
“Senses Working Overtime”と双璧をなす、このアルバムの生命線です。
7曲目の”All Of A Sudden (It’s Too Late)”:張り詰めた雰囲気の中で、ほっと一息いれられる安堵感漂う美しい曲です。
アコースティック・ギターならではの優しい音色が穏やかな曲調(タイトルにはそぐわないような気がしますが)よくマッチしています。
8曲目の”Melt The Guns”:小刻みに叩かれるパーカッションとギターにエキゾチックな匂いを感じます。
ラップのような語りかけるような歌声は斬新です。
10曲目の”It’s Nearly Africa”:お次は、アフリカのリズムです。
ですが、あまりにもモダンなリズムです。
間奏のブラスのサウンドも、ワールドワイドの音楽の風を感じます。
11曲目の”Knuckle Down”:曲の出だしは、”Till There Was You”(ブロードウェイ・ミュージカル『ミュージック・マン』の劇中で使用され、”The Beatles”もカバーしました。)を思わせます。
12曲目の”Fly On The Wall”:曲の発想がユニークです。
“I am The Fly On the Wall”:ちょっと歌詞がいかれていますね。
人間の機微を俯瞰的な視点で捉えているのでしょう。
“Magazine”あたりが作りそうな曲ですね。
曲はいい線いってます。適度にキャッチーですしね。
ところで、”On”という前置詞、気になりますね。
“Depeche Mode”の曲の中にも、”Fly on the Windscreen”という曲がありますが、「蠅」が止まる場所には、”on”とう前置詞が使われます。
たとえその場所が、天井に止まっているという場合でも、”Fly on the ceiling”となるでしょう。
学校で習った”on”という前置詞は、「~の上に」というように覚えましたので、天井の上(天井裏みたいになっていまします)と解釈してしまいそうです。
「~の上に」というよりも「~に接して」というイメージの方がしっくりくるかも知れません。
(洋楽とは、あまり関係ありませんでしたが、歌詞の微妙な解釈には前置詞というのはとても大切です)
15曲目の”Snowman”:緊迫した大作のエンディングは、美しいメロディが心地良く響く、
次作アルバム”Mummer”の穏やかなサウンドにつながる曲です。
特に曲のエンディングのサンタのソリの音は、心温まるクリスマス・イブを連想させます。
時には、休養が傑作を生み出す
アルバムの随所に、凝りに凝った音楽的な技法と張り詰めた雰囲気が感じられます。
多くの曲を担当している”Andy Partridge“が、この時期ツアー中に倒れてしまうというアクシデントがありましたが、そのことと無縁とは思えません。
次作のアルバム”Mummer“では、アコースティック志向はより強まりますが、”English Settlement”のような張り詰めた雰囲気はありません。
どちらかというと、牧歌的で、アコースティックの柔らかさ、ぬくもりを感じるサウンドとなっています。
(アコースティックと聞いて連想するような正にそんな音です。)
“English Settlement”は、確かに傑作ですが、このような緊張感に包まれたアルバムを立て続けに作ると精神も苛まれると心配になります。
傑作を生み出すのにも休養が必要です。
![]() |
新品価格 |
コメント
こんにちわ、
「 It’s Nearly Africa 」は、スウィング・ジャズのメロディなのだそうです。
ノエルかえるさん
今回も有益な情報ありがとうございます。
今後も、音楽ファンのみなさまに役に立つサイト作りを心がけていきたいと思っていますので、これからも、ご支援お願いします。