“Human League”3作目のアルバムです。
デビュー・アルバムだと思っている人も多いと思います。
それもそのはず、アルバム収録中の”Don’t You Want Me“のヒットで一躍有名になったので、その前の2作を知らない人が多いのも無理からぬ話です。
(しかもその2作は、とても実験的なサウンドで、「エレクトリック」でありますが、とても「ポップ」というものではありませんでした。)
アルバム”Dare”の発表前に、創立時のメンバーの”Ian Craig Marsh“と”Martyn Ware“が脱退しています。
残った”Philip Oakey“が、女性ボーカル2人をスカウトし、新生”Human League”はスタートします。
そう言う意味では、”Dare”は、新生”Human League”のデビュー・アルバムと言えなくはないでしょう。
ポップ路線に大きく舵をきった新生”Human League”は、そのキャッチーなサウンドで多くのファンの心をつかみました。
代表曲の”Don’t You Want Me”以外にも、魅力的はメロディーをもった曲が数多くありますので、それも頷ける話です。
<曲目リスト>
- The Things That Dreams Are Made of
- Open Your Heart
- The Sound Of The Crowd
- Darkness
- Do Or Die
- Get Carter
- I Am The Law
- Seconds
- Love Action (I Believe in Love)
- Don’t You Want Me
もっともキャッチーなエレクトリック・ポップ
1曲目の”The Things That Dreams Are Made of”:エレクトリック・ポップの黄金時代の幕開けを告げる曲です。
やや時代を感じさせる軽い電子音も聞こえますが、それは、エレクトリック・ポップの先駆け的な存在であることの証でしょう。
エレクトリック・サウンドは、”Kraftwerk“(クラフトワーク)の時代からありますが、素人同然の女性コーラスをはべらせ、ここまで、ポップ・ミュージックとして表現した”Philip Oakey”の功績は大きいでしょう。
2曲目の”Open Your Heart”:一昔前の電子音と”Philip Oakey”の髪型は、ともかく、メロディー・ラインはとても良いと思われます。
単に流行のエレクトリック・ポップというだけではなく、メロディーの美しさなどが大衆の支持を得た結果これだけの人気を集めたのだと思います。
The Human League – Open Your Heart (1981) 投稿者 ArmandMax
3曲目の”The Sound Of The Crowd”:前奏のパーカションのリズム結構イケていると思います。
一所懸命に歌っている女性コーラスの姿も微笑ましいですよね。
一見単調なサウンドですが、楽曲はいい線いってると思います。
これまでのエレクトリック・ミュージックにはないキャッチーな音を感じます。
8曲目の”Seconds”:女性コーラスの力を借りずに、”Philip Oakey”の渋い歌声だけで仕立て上げていますね。
ただ、”Dare”以前の”Human League”の音とは明らかに異なります。
実験的な音は影を潜めファンタジックな音の広がりを感じさせます。
9曲目の”Love Action”:カラフル・ポップで、ファッショナブルなサウンドです。
間奏のキーボードの音が、これまた華やかで曲の雰囲気に花を添えていますね。
10曲目の”Don’t You Want Me”:いよいよ真打の登場です。
ラストまで引っ張りましたね。
満を持しての登場です。
歌詞としては、男女の情愛を語った歌です。
男性が、「最近つれないじゃないか。昔、カクテル・バーのウエイトレスをしていたお前を見初めてここまで仕立てたのは誰のおかげだと思っているんだ」と詰め寄ると、女性は、「なに恩着せがましいこと言ってんのよ。あんたなんかいてもいなくても私は私よ。」と切り返す、英国版「3年目の浮気」です。
しかし、ここまで世界的に大ヒットした理由は、「3年目の浮気」を凌ぐ、卓越したメロディーに依るところが大きいでしょう。
まさに、エレクトリック・ポップの金字塔です。
エレクトリック・ポップ・ムーブメントの先駆け
アルバム”Dare”が発表される前に、”Ian Craig”と”MarshMartyn Ware”の2人は、”Human League”を去り、”Heaven17″という名のバンドを結成しました。
大衆化路線に舵をきった新生”Human League”とは、対照的で、緻密な音作りを基礎に、エレクトリック・ポップの可能性を追求してきました。
マーケティングの手法で言えば、”Heaven17″の手法が、”Product Out“であるならば、新生”Human League”のそれは、”Market In“です。
現代マーケティングの定石で言えば、その勝者は、”Market In”の後者となるわけですが、実際、”Philip Oakey”率いる新生”Human League”は商業的な成功を収めることができました。
ただ、どちらの音楽が優れているかは、音楽ファンの意見が分かれるところでしょうし、好きな音楽を聴けばいいという問題でしょう。
しかし、確実に言えることは、このアルバム”Dare”の商業的な成功で、エレクトリック・ポップに対する音楽界の認知度は格段にアップしたということです。
この成功をきっかけに、多くのエレクトリック・ポップ・バンドが生まれ、そして多くのバンドが消えていきました。
残ったバンドに共通するものは、エレクトリックな手法は段々と影を潜めて、自らの音楽性を極めていった点でしょう。
“New Order“にしろ、Depeche Mode“や、”OMD“にしても、もはや彼らをエレクトリック・ポップ・バンドとは言わないでしょう。
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