“Supertramp”3作目のアルバムです。
次作の”Breakfast in America“は、世界的な大ヒットを記録しました。
本作は、”Breakfast in America”が、「明」とするならば、「暗」。
「陽」ならば「陰」。
「左心室」ならば「右心房」(心臓の構造)。
アルバム・タイトルは、”Supper In England”、いやタイトルは、もう”Crime of Century”と決まってました。
“Breakfast in America”の中に、”Take The Long Way Home“という曲がありますが、この曲の前奏の直前に聞こえる音は、まさに、”Crime of Century”の音です。
やがて、あの軽やかなメロディーが始まるのですが、”Supertramp”の世界(特にアメリカ)に向けてのポップ・ミュージックの夜明けを告げるような前奏です。
とりわけ、大ヒット・アルバムと比べる必然性はありませんが、この”Crime of Century”は、”Breakfast in America”のように誰の耳にもわかりやすい程のポップ性はありませんが、芸術的な価値は十分にあります。
<曲目リスト>
- School
- Bloody Well Right
- Hide In Your Shell
- Asylum
- Dreamer
- Rudy
- If Everyone Was Listening
- Crime Of The Century
芸術性の高さはあの”Breakfast in America”を越えた?!
1曲目の”School”:”Crime of Century”を芸術作品に押し上げることになった”Super Tramp”屈指の傑作です。
特に、曲の後半部分のピアノの独奏は、もうプログレッシブ・ロックとか、ポップ・ミュージックなどのジャンルを超えています。
かつて、リストの音楽が貴婦人を虜にしたように、”School”で奏でるピアノの旋律は、音楽ファンをメロメロにしたはずです。
3曲目の”Hide In Your Shell”:この曲名を聞いて、日本の映画「私は貝になりたい」を想像せずにはいられません。
曲調は、オルゴールのような可愛らしい前奏で始まり、淡々とした感じで歌声が続きます。
“Breakfast in America”の各曲のようなわかりやすいポップ性はありませんが、メロディーは珠玉の美しさで聴く回数を重ねるごとにその味わいの深さを感じることができます。
曲後半部分の盛り上がりは、前半の主題をより情念的に繰り返し、それにサックスの音が加わります。
5曲目の”Dreamer”:”Roger Hodgson”の高音部分の歌声が、素晴らしく聴くものを一瞬で夢心地にします。
“Breakfast in America”や”The Logical Song”があれだけ大ヒットしたのも、楽曲の美しさも勿論あったでしょうが、”Roger Hodgson”の歌声の魅力も影響大でしょう。
その魅惑の歌声も、驚くべきことに20年以上経った今でも少しの衰えを感じません。
6曲目の”Rudy”:”School”に次ぐ、ピアノの演奏が際立った曲です。
曲調も渋く音楽ファンをうならせるような格調高いメロディーです。
8曲目の”Crime Of The Century”:”School”同様、芸術性の高い曲です。
「世紀の犯罪」に巻き込まれた被害者へのレクイエム「鎮魂曲」にも聞こえなくはないです。
ピアノやサックス、ストリングスの音が物悲しく響きます。
次作の大ヒットでスポットライトがあたった隠れた名作
次作の”Breakfast in America”の世界的な大ヒットのおかげで、この”Crime of Century”にも光があてられるようになったのは、音楽界にとっては大変ありがたいことでした。
これほど芸術性の高いアルバムが、一部の洋楽ファンの間だけの存在であったとしたら大変な損失でしょう。
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