“Roxy Music”4作目のアルバムです。
最も、ロック色が強い、バンドの演奏も勢いのある時代の作品と言えそうです。
アルバム・ジャケットも相当に物議を醸し出しました。
アメリカでは、2人の女性の姿を消されたジャケットに差し替えられたほどです。
<曲目リスト>
- The Thrill Of It All
- Three And Nine
- All I Want Is You
- Out Of The Blue
- If It Takes All Night
- Bitter Sweet
- Triptych
- Casanova
- A Really Good Time
- Prairie Rose
メンバー紹介は一人ずつお願いします
1曲目の”The Thrill Of It All”:”Roxy Music”の後期の2作品が、この頃のバンドの音とかなり開きがあるのがなぜか、この曲を聴けば、その理由が良くわかります。
よくライブで、各楽器のメンバーを紹介するときに、「ギターは、フィル・マンザネラ」と紹介すると、ギターのソロで応えますよね。
そして、「サックスは、アンディ・マッケイ」と呼ぶと然りです。
しかし、この時代の”Roxy Music”を代表するこの曲は、同時にメンバー紹介をして、各パートのプレイヤーが同時にそれに応えてソロを披露するといったことをしています。
(もし、ここにキーボード奏者の”brian eno”がいたら、もっとややっこしくなっていたことでしょう。
彼もまた、強烈な個性の持ち主で、その存在が、バンドのフロント・マンの”bryan ferry”にどのように映っていたかは定かではありませんが、「同じバンドにブライアンは2人もいらない!」と言った感情はあったかも知れません。
そんな訳で、”brian eno”は、前々作の”For Your Pleasure”を最後にバンドを去っています)
そんなことをしたら、どうなるか想像に難くないですよね。
ゴージャスだけど、ともするとぐたぐたになります。
一方で、「個性を発揮するのは、ちょっと我慢して、曲の統一感を尊重してね」というのが、”More Than This”や”Same Old Scene”、”Avalon”です。
各バートの個性を全面に出して、曲を殺すか、各パートの個性を抑えて、曲を活かすかの難しい選択なのです。
勿論、個性全開の豪華絢爛サウンドの方を好む人もいるでしょうし、メンバーも生き生きとプレーできることもあるでしょう。
2曲目の”Three And Nine”:このアルバムの中では、珍しく、シンプルな楽曲で、”bryan ferry”もさらりと歌っています。
3曲目の”All I Want Is You”:1曲目の”The Thrill Of It All”と同じ傾向にあります。
ただ、間奏のギターのソロは、メリハリがあっていいですね。
(ギターだって、曲の間中、常にかき鳴らさなくてもいいのです。ここぞというときにビシッと決めてくれればそれでいいんです。かつて、元ブラジル代表の「ロナウド」は得点シーン以外はほとんど歩いていました。)
4曲目の”Out Of The Blue”:”Out Of The Blue”というの英語の慣用句で、「出し抜けに」、「突然に」という意味です。
日本語の「青天の霹靂」というのに、近いニュアンスですね。
洋の東西で、「青」というのが、同じように使われているのは興味深いですね。
曲の方は、「出し抜けに」というより、フェード・インしながら、徐々に盛り上げりをみせながら始まります。
良くライブで演奏される機会が多い曲です。本人たちも結構気に入っている曲なのでしょう。
5曲目の”If It Takes All Night”:演奏しているメンバーの表情がいきいきとして楽しそうです。
“bryan ferry”自らハーモニカを吹いています。
10曲目の”Prairie Rose”:理屈抜きに、文句なしの名曲です。
前奏からして奮っています。各パートの聴かせどころも、しっかりと整理されていて、非常にバランスが取れています。
間奏や、エンディングもそれぞれの趣があり、完成度も、”Flesh & Blood”や”Avalon”の曲に比べても遜色ないほどです。
洗練された音は一朝一夕に生まれたものではない
洗練された音や、曲の完成度の高さにおいて、分がある”Flesh & Blood”や”Avalon”を好む音楽ファンが多いいと思いますが、”Roxy Music”の魅了を十分味合うことを望むのならこの”Country Life”の方が適しているでしょう。
実際、メンバー自身もこちらのアルバムの方が気に入ってるのではないでしょうか。
少なくとも、やりたいことをやりきった達成感はあるでしょう。
ただし、音楽業界も、マーケティングの理論から説明すると、アーティストがいいと思って作った作品(プロダクト・アウト)は、聴衆がいいと思って聴く作品(マーケット・イン)に淘汰されていくのが必然なのかも知れません。
“Flesh & Blood”や”Avalon”の各曲が、「すっきりとした」あるいは「洗練された」印象を持つのは、この時代のバンドのてんこ盛りのサウンドを引き算した結果だからと思います。
急に、あのような名曲(”More Than This”や”Same Old Scene”)が生まれたわけではありません。
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