“Roxy Music”の8作目のアルバムにして、最後のアルバムです。
前々作のアルバム”Manifesto”で、大衆化路線に舵をきった”Roxy Music”は、前作のアルバム”Flesh & Blood”で、その方向性が幅広い音楽ファンに支持されました。
本作”Avalon”は、前作の”Flesh & Blood”の流れを踏襲する音作りとなりました。
しかしながら、その音楽性は、さらに一段高みに昇りつめた感があります。
それは、さながら、アルバム・ジャケットにあるように、”Bryan Ferry”率いる”Roxy Music”が、音楽界を俯瞰するかのような余裕すら感じさせます。
それほどの最高傑作となるアルバムです。
<曲目リスト>
- More Than This
- The Space Between
- Avalon
- India
- While My Heart Is Still Beating
- The Main Thing
- Take A Chance With Me
- To Turn You On
- True To Life
- Tara
“Roxy Music”最高到達点:「桃源郷」の世界
1曲目の”More Than This”:”Roxy Music”の”Avalon”の世界へと誘う一曲です。
“Avalon”の世界とは、現実と遊離した「桃源郷」の世界、「ユートピア」の世界です。
アルバム・ジャケットからも連想される霞のかかった暖かい光に包まれた世界です。
ついに、”Roxy Music”の音もここまでの高みに達しました。
最高傑作であるこのアルバム”Avalon”の最高傑作の曲がこの”More Than This”です。
“Roxy Music”の到達点の高さを感じるのが、楽器の使い方です。
アルバム”Siren”以前の時代の楽器の自己主張の強さが影を潜め、美しい楽曲を邪魔しない程度にさりげない音にとどめています。
(というよりも、美しい楽曲を最大限に引き出すように、各楽器は本当に自己を犠牲にして辛抱しています)
“Roxy Music”の音楽の歴史をたどってみると、これを単なる”AOR”路線とは呼びたくはないです。
2曲目の”The Space Between”:何と何の間のスペースなのでしょうか。
現実世界と”Avalon”の桃源郷の世界の空間に、私には思えます。
ぐいぐい”Avalon”の世界へと引き込んでいきます。
3曲目の”Avalon”:いよいよ”Avalon”世界の王宮に足を踏み入れることになります。
この曲の主役は、淡々と歌う”Bryan Ferry”というよりも、高音の美しい歌声の女性ボーカルではないでしょうか。
“Brian Eno”が自分よりも目立つこと苦々しく思っていた”Bryan Ferry”の心の成熟度が伺えます。
(これは、私の勝手な想像です。)
6曲目の”The Main Thing”:4曲目の”India”同様、エキゾチックなサウンドで、”Avalon”の世界へ迷い込んでいきます。
あまりに心地良いサウンドに身を任せていれば、ただそれだけでよいのです。
7曲目の”Take A Chance With Me”:甘美のギターの調べが待っています。
しかし、それは、曲が始まってから、一分以上待たなければなりません。
引っ張って、引っ張って、満を持してギターが登場します。
また、ひとつ”Roxy Music”は、学習しました。(とても失礼な言い方ですみません)
演奏技術を誇示するかのようなプレイは聴衆を辟易させますが、まだかまだかとやきもきさせる方が、その効果はより高くなるのは人間の性です。
勿論、ギターの調べだけが美しい曲ではありません。
楽曲も見事で、”More Than This”のような誰が聴いても名曲と思えるほどのインパクトはありませんが、じっくり味わうたびに曲の素晴らしさを実感できる隠れた名曲だと思います。
10曲目の”Tara”:「桃源郷」は、現実の世界ではありません。
必ず終わりがあります。
“Tara”は、「またね」などの意味です。
桃源郷とのお別れを告げる曲です。
「桃源郷」は永遠には続かない
“Tara”「またね」のあいさつで、お別れを告げる”Roxy Music”。
「桃源郷」の世界は永遠には続かないのです。
しかし、”Avalon”は、音楽ファンの心に末永く記録されることでしょう。
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