“OMD”の3作目のアルバムです。
前作のアルバム”Organisation”「邦題:エノラゲイの悲劇」に収録されていたシングル曲”Enola Gay”「邦題:エノラゲイの悲劇」で、エレクトリック・ポップの寵児となった”OMD”ですが、
「エノラゲイの悲劇」は、その曲名とは裏腹に、ポップでテンポの良い曲でした。
一転して、本作”Architecture And Morality”は、バンド名”Orchestral Manoeuvres In The Dark”の通り、暗闇から届けられたような陰鬱な空気すら感じます。
しかし、その暗く湿った空気は、彼らの持つ独特の音楽観と美しいメロディをより引き出しているように思えます。
それが、彼らの最大の魅力であり、その魅力が最も色濃く出たアルバムだと感じています。
<曲目リスト>
- The New Stone Age
- She’s Leaving
- Souvenir
- Sealand
- Joan Of Arc
- Joan Of Arc (Maid Of Orleans)
- Architecture & Morality
- Georgia
- The Beginning & The End
“OMD”ワールドは安息の地か?
1曲目の”The New Stone Age”:アルバムの口火を切るには、あまりに重い曲です。
しかし、これが”OMD”ワールドです。
そう言えば、このアルバムは、発売当初「安息の館」という邦題がついていました。
この曲は、安息の館に一歩足を踏み入れたというところでしょうか。
まだ、ほんの入口に入ったところです。
先に進んでも、一向に光は見えてきません。
あなたの目が、耳が暗闇にだんだんと慣れていくのです。
そして、必ず、心に響くメロディを肌で感じ、頭の中に閃光が走ることになるのです。
2曲目の”She’s Leaving”:そして、そんな時は、ほどなくやってきました。
甘美のメロディが曲全体を支配しています。
“OMD”の音楽の世界にだんだんと引きずり込まれてきました。
暗闇の中から、光明を得た思いです。
3曲目の”Souvenir”:2曲目の”She’s Leaving”を聴いた後で、これを凌ぐ極上のメロディが待っているとは誰が想像したでしょうか。
“Paul Humphreys”が歌う、”Secret”(アルバム”Crush”に収録)と双璧をなす名曲です。
後に、”Pacific Age”を最後に、”Paul Humphreys”は、”OMD”を脱退(オリジナルメンバー2名のうち1人がいなくなるので分離と言った方が適切かも知れませんが)することにんりますが、
本当に惜しいことです。
5曲目の”Joan Of Arc”:アルバムのハイライト、安息の館でいうメイン・ダイニングといったところでしょうか。
“OMD”の真骨頂です。
こんな曲は、”OMD”以外の誰も作らないでしょう。
“OMD”以外には、曲想すら浮かんでこないに違いありません。
同様に、この美しいメロディもそうやすやすと生み出せるものではないでしょう。
中世ヨーロッパの重々しいイメージが浮かんできそうです。
6曲目の”Joan Of Arc (Maid Of Orleans)”:”Maid Of Orleans”「オルレアンの乙女」オルレオンの市民は、”Joan Of Arc”「ジャンヌ・ダルク」のことをそう呼びます。
1429年に、オルレアン包囲線の際に、ジャンヌ・ダルクがオルレアンに入り、この町を開放しました。
そして、ジャンヌ・ダルクが捉えられた時にはオルレオン市民は、身代金を寄付しました。
(この身代金はフランス王シャルル7世が没収したため、ジャンヌ・ダルクは釈放されませんでした)
そんな思いを巡らせているかのように、曲は美しくも悲しみを帯びた憂いのあるメロディを奏でています。
7曲目の”Architecture & Morality”:表題曲でありながら、いえ、表題曲であるからこそ、この重苦しいアルバムを象徴するかのような音です。
8曲目の”Georgia”:このアルバム”Architecture & Morality”の中にあって比較的明るい曲です。
“Souvenir”、”Joan Of Arc”に比べて若干地味な印象はありますが、この”Georgia”を含めてこの3曲のメロディの美しさは秀逸です。
今でこそ、アルバム”Architecture & Morality”のCDを手に入れることは容易ですが、ベスト盤にも収録されていないこの”Georgia”を聴きたくて、
アルバム”Architecture & Morality”を手に入れるのに苦労したことを覚えています。
9曲目の”The Beginning And The End”:安息の館の入口であり出口であります。
ここまでアルバムを進めてきたあなたは、”OMD”の世界にどっぷりと浸ったことでしょう。
そして、この安息の館を後にするころには、あまりの外の世界の眩しさに目が眩むことでしょう。
エレクトリック・ポップといういには重すぎる?
エレクトリック・ポップというには、あまりに重い音です。
しかし、単に心地良い明るく弾むようなエレクトリック・ポップなどは、掃いて捨てるほどあります。
“OMD”は、そうした大量生産大量消費型のエレクトリック・ポップ・バンドとは、一線を画します。
持っている音楽観が、深いし、生み出す楽曲のメロディは他に類を見ないぐらいに美しく、聴く者の心をくすぐります。
“OMD”の美しいメロディに触れると心がハイになり、常習性を伴います。
恐らく、多感な青少年には、「”OMD”を聴くのは1日1時間までにしなさい」と親御さんにたしなめられたものと思います。
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