Sweetbox(スウィート・ボックス)の4作目のアルバムです。
アルバム・タイトル”Adagio”が、示す通り、本作は、再びクラシック路線回帰のアルバムとなりました。
“Adagio”は、音楽用語では、遅い速度を示すゆるやかなテンポを意味し、イタリア語で、「くつろぐ」というのが元の意味です。
アルバム・ジャケットの”Jade Villalon”もくつろいだ姿勢でこちらを見つめています。
クラシック路線と言っても、デビュー当時のクラシック音楽との関わり方は随分と変わってきました。
デビュー・アルバムのシングル曲”Everything’s Gonna Be Alright”は、クラシック音楽をサンプリングとして、ヒップ・ホップを重ねていましたが、本作”Adagio”の各曲は、クラシック音楽との融合がより親和性を深めています。
<曲目リスト>
- Liberty
- Life is Cool
- Somewhere
- Hate without Frontier
- Far Away
- Testemony
- Il’ Be There
- Lacrimosa
- Sorry
- I don’t wanna be
- Chyna Girl
- Everybody
再び、クラシック路線回帰へ
1曲目の”Liberty”: オープニングのモーツァルトの「レクイエム」の重厚な雰囲気から、解き放たれたように、”Jade Villalon”の弾むような歌声が続きます。
キーボードの音もどこかパイプ・オルガンを思わせるような神聖な響きです。
2曲目の”Life is Cool”: 本作”Adagio”の代表的な曲です。
こちらは、「パッヘルベルのカノン」を元にした曲です。
“Life is Cool”を何度も繰り返し聴いていると、「パッヘルベルのカノン」を聴くたびに、”Life is Cool”を自然と口ずさんでしまうほど、馴染んでいます。
“Life is Cool”:「人生はカッコいい」=「人生は捨てたものじゃない」という人生の応援歌です。
何とかポジティブに生きようと、前向きに生きることへのポジティブ・ソングです。
そう言えば、デビュー・アルバムの”Everything’s Gonna Be Alright”:「全てうまくいくよ。大丈夫だからね」も、人生の応援歌と言えるでしょう。
3曲目の”Somewhere”: 穏やかな原曲の「グノー」の「アヴェ・マリア」を、情熱を帯びた曲に仕上げています。
“Jade Villalon”が、人生における様々な疑問を投げかけています。
“Do You Know What You’re Looking for”:「探し物は、何かわかってるの?」
“Why Your Your Tears Dry Clear”:「なんで、涙は乾くの?」
“Do You Know Why You’re Waking up”:「なぜ、目が覚めるのかわかる?」
考えてもこたえのわからない質問に、答え続けるのが人生でしょう。
5曲目の”Far Away”: 今度は、「アレッサンドロ・マルチェッロ」の「オーボエと弦楽合奏のための協奏曲 ニ短調」ときました。
“Sweetbox”のクラシック音楽の造詣の深さには舌を巻きます。
クラシック音楽ならなんでも、アレンジできる訳ではないらしいです。
“Jade Villalon”が、言うには、数あるクラシック音楽でも、ポップ・ミュージックに昇華できる曲は、そうそうあるものではないということです。
“Sweetbox”の手にかかれば、湯水のように湧き出るものと思いがちですが、影で大変な苦労をしているのですね。
11曲目の”Chyna Girl”: この曲だけは、クラシック路線の回帰というアルバム・コンセプトから少し外れる曲ですが、楽曲の魅力は十分で、アルバムからは外せない曲です。
前奏から、東洋的な雰囲気をプンプン匂わせ、”Sweetbox”というよりも、”Jade Villalon”プロジェクトとも思える”Jade”の思い入れが伺えます。
ライブでも”Jade Villalon”が熱唱する姿は印象的でした。
クラシック路線回帰の中にも、新たな構想が
“Sweetbox”も4作目を迎え、前作のアルバム・タイトル”Jade”が示す通り、音楽的な主導権の変容がみえるようになってきました。
これまでのプロデューサーである”Roberto “GEO” Rosan”の音楽的な構想を、シンガーである”Jade Villalon”が単に歌うという構図から、”Jade”のクリエイターとしての存在が大きくなってきました。
その表れの一つとして、”Chyna Girl”の存在があります。
しばらく、”Sweetbox”の、”Jade”ソロ・プロジェクトの志向は続きそうです。
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